No.17 2008年10月10日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.17 2008年10月10日発行

   
 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 第17号

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 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
 第17号   2008/10/10
☆☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★☆☆☆☆☆☆★★☆☆★

編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目次
[学会からのお知らせ]

◆The Knowledge Forum2008のプログラムが確定しました
(広報部会)

◆第12回年次大会の開催地が決定しました
(広報部会)

◆学会賞受賞候補者の推薦についてお願い
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

◆「知の創造」研究部会 10月21日研究会開催
(「知の創造」研究部会)

◆組織認識論研究部会が次回研究部会の報告者を募集
(組織認識論研究部会事務局)

◆MAKE-J 2008 調査結果
(広報部会)

◆日産先進技術開発センターが日経ニューオフィス賞を受賞
(ベンチマーキング部会)

[学会員からの寄稿・募集など]
◆北陸先端科学技術大学院大学より、教員公募のお知らせ

◆KMWorld & Intranets 2008参加報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会 齋藤 稔)

◆経済産業新報より「ソフトウェア産業の下請け構造を改革したい
第2次中期計画をスタートさせたIPA」

[転載記事]
◆メルマガ「クリエイジ」より、新刊・近刊ニュース

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◆The Knowledge Forum2008のプログラムが確定しました
(広報部会)

 かねてからお伝えしているとおり、今回のThe Knowledge Forumは、
今年11月16日(日)-17日(月)に東京商工会議所で開催いたします。
当日のプログラムは、TKF2008公式サイトに掲載しています。

  http://tkf2008.jpn.org/

 より多くの会員の皆様にご参加いただけますよう、会員向け入場券
価格を大幅に値下げし、10,000円とさせていただいております。また、
The Knowledge Forum 2008 に合わせて、ナレッジ・ネジメント関連
の書籍を発行いたします。ご参加の会員には当日1冊をお渡しします。
また、TKF2008に参加できない会員の方からの賛助金を歓迎いたします。

参加を希望される方は、
1.学会事務局へEメールにてお申し込み下さい。
  Eメール: kms@gc4.so-net.ne.jp
  その際、入場チケットの送付希望先を明記してください。
2.受付確認の返信メールをいたしますので、以下銀行口座へ
  入場チケットの代金10,000円をお振り込み下さい。
  ご入金の確認ができ次第、チケットを送付させていただきます。
  なお、第1日18:00からの懇親会に参加を希望される方は、
  会費5,000円を合わせてお送り下さい。
   みずほ銀行日本橋支店 普通預金
   口座番号 8056924
   口座人名 日本ナレッジ・マネジメント学会 理事長 森田松太郎

・The Knowledge Forum 2008お申し込み先
日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp

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◆第12回年次大会の開催地が決定しました
(広報部会)

 10月4日に開催された全国研究部会長会議で、第12回年次大会の
開催地と日程が決定いたしました。東海部会の全面的な協力を得て、
初の名古屋での開催となります。会員の皆様の積極的なご参加を
お願いいたします。

日時:2009年 3月7日(土)
場所:名城大学理工学部
特別講演:名城大学理工学部飯島澄男教授
     カーボンナノチューブの発見に至るナレッジ(仮)

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◆学会賞受賞候補者の推薦についてお願い
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

 今年度学会賞の候補者推薦を、下記の要領で頂きたいと思います。
会員各位のご協力をお願い致します。

I 受賞対象の著書
ナレッジ・マネジメントに関する優れた著書で、平成19年10月1日
より平成20年9月30日の期間に公刊されたもの。

II 受賞内容
著者に対して賞状ならびに賞金。

III 推薦の方法
自薦および他薦とし、他薦の場合には出版社を含む。

IV 審査
推薦著書について、学会賞選考委員会において審査する。

V 受賞者の発表
申し込み者に、直接通知する。

VI 申し込み方法・問い合わせ
著書に推薦者の住所氏名と推薦の理由を記した書面を添付の上、
下記事務局へ平成20年12月1日(必着)までに送付する。
原則として返却しない。

日本ナレッジ・マネジメント学会 事務局
〒103-0022
東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル
(株)日本ビジネスソリューション内

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◆「知の創造」研究部会 10月21日研究会開催
(「知の創造」研究部会)

「知の創造」研究部会の第3回研究会を下記の要領で開催いたします。
初めて参加される方も歓迎いたします。
参加希望者は、お気軽に下記の連絡先までメールでご連絡願います。
 今回の事例企業・製薬企業イーライリリー社は、提携関係に基づく
ビジネス・モデルのイノベーションに取り組み、新薬開発の短縮に
対応しており、注目されます。
 本研究部会では、「知の創造」に関する企業の事例研究と報告を行い、
参加者間で知見の交流を通じてお互いに学び合い、
知の交流・共創のダイナミックな場を目指します。

第3回研究会の実施要領

日時:2008年10月21日(火曜日)午後4:00-7:00
場所:大手町東京経済大学葵友会サテライトオフィス
   東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル5階533号室
   営団地下鉄:丸の内線・半蔵門線・千代田線・東西線
         大手町駅下車2分(駅ビル内]
   都営地下鉄:三田線 大手町駅下車徒歩2分
   JR線:東京駅丸の内北口から徒歩7分
プログラム:
1.  事例研究の調査質問項目・日程案等の検討, 事例対象企業の選定等
(午後4:00-5:20)
休憩(10分間)
2. 企業事例の報告(午後5:30-7:00)
報告者: 日本イーライリリー(株)
     研究開発本部薬事業務企画部長・安田 賢児氏氏
テーマ: イーライリリー社の価値創出とR&Dの変革」
報告内容:イーライリリー社のR&Dトランスフォ-メーションについて紹介
して具体的なオペレーションレベルでのいくつかの取り組みについて、ナ
レッジが価値の創出にどのように機能しているか、検討材料を提供します。

連絡先: 日本ナレッジ・マネジメント学会「知の創造」研究部会長 
 植木英雄(東京経済大学教授) ueki-mhk■tcat.ne.jp
(送信の際は、■を半角の@に入れ替えてください)
参加費: 無料(飲み物は各自でご用意願います)

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◆組織認識論研究部会が次回研究部会の報告者を募集
(組織認識論研究部会事務局)

今年度最後の組織認識論研究部会を以下の要領で行います。
報告者を募集しております。
日時: 12月14日(日)13:30より(3報告程度)
場所: 神戸大学 中会議室

報告希望者は、11月10日までに以下事務局までご連絡下さい。

連絡先・事務局
大阪学院大学企業情報学部 喜田昌樹
E-Mail:keen39■u01.gate01.com
(送信の際は、■を半角の@に入れ替えてください)

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◆MAKE-J 2008 調査結果
(広報部会)

MAKE-J調査は、昨年度までKM学会企業評価部会が日本語で実施
してきましたが、今年度からThe KNOW NetworkのRory Chaseが
直接調査をするようになりました。
9月8日に以下のFinalists23社が発表されました。
- AEON (Retail)
- Brother Industries (Computers and office equipment)
- Canon (Computers and office equipment)
- Denso (Motor vehicle parts)
- Fuji Xerox (Computers and office equipment)
- Hitachi (Computers and information systems)
- Honda Motor (Motor vehicles)
- Horiba (Electronics & electrical equipment)
- JFE Holdings (Diversified manufacturing)
- Kao (Household and personal products)
- Komatsu (Construction and mining equipment)
- Matsushita Electric Industrial (Electronics & electrical equipment)
- Nintendo (Entertainment)
- Nippon Steel (Metal fabrication)
- Nissan Motor (Motor vehicles)
- NTT DoCoMo (Telecommunications)
- Recruit (Temporary help)
- Seven-Eleven Japan (Retail)
- Sharp (Electronics & electrical equipment)
- Sony (Electronics & electrical equipment)
- Takenaka (Engineering & construction)
- Toshiba (Electronics & electrical equipment)
- Toyota (Motor vehicles)

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◆日産先進技術開発センターが日経ニューオフィス賞を受賞
(ベンチマーキング部会)

6月にベンチマーキング部会が企業訪問した日産先進技術開発センター
が2008年度 第21回日経ニューオフィス賞の推進賞 経済産業大臣賞
を受賞しました。

オフィス名 所在地
日産先進技術開発センター 神奈川県 経済産業大臣賞
トムソンロイター 東京都 クリエイティブオフィス賞
アマナ T-2オフィス 東京都 クリエイティブオフィス賞
NTTコミュニケーションズ松町オフィス 東京都 情報賞
大成札幌ビル 大成建設札幌支店 北海道 環境賞
MTV Networks Japan? 東京都
日本ヒューレット・パッカード?中部支店 愛知県
ベリングポイント?大阪オフィス 大阪府
株式会社ミクシィ 本社オフィス 東京都
NHN Japan?大崎新オフィス 東京都
株式会社ゲームフリーク 東京都
三松堂印刷 本社オフィス 東京都
ツネイシホールディング?神原汽船カンパニー 広島県

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◆北陸先端科学技術大学院大学より、教員公募のお知らせ

 国立大学法人・北陸先端科学技術大学院大学・知識科学研究科
(本キャンパス=石川県能美市旭台1-1、サテライト・キャンパス=
東京都港区田町芝浦3-3-6キャンパス・イノベーション・センター
3・4階)では、ナレッジ・マネジメント、経営戦略論、イノベー
ション・マネジメント、知的財産マネジメントを専門とする准教授
を公募します。

 締め切りは2008年12月31日(当日印有効)です。主な応募資格は、
博士号を持っていること、日本語および英語で講義できることです。
女性ないし外国人の応募を歓迎しており、評価が同等のときは女性、
外国人を優先いたします。

 着任時期は来年4月1日以降のできるだけ早い時期とし、任期を10年
としますが、再任可能です(任期制にかわるテニュア制度を検討中
です)。勤務地は、石川および東京です。

 必要な応募書類等の詳細については、下記の連絡先にお問い合わせ
ください。 

社会知識領域教授 梅本勝博 ume■jaist.ac.jp TEL: 0761-51-1711
(送信の際は、■を半角の@に入れ替えてください)

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◆KMWorld & Intranets 2008参加報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会 齋藤 稔)

○イベント概要と特徴
 第12回となるKMWorld Conferene and Exhibitionが、2008年9月23日-
25日に昨年同様San Jose McEnery Convention Centerで開催された。講
演のセッション数(12トラック64セッション),展示社数(メディ
ア含め52社),イベント前日のワークショップ数(20)は昨年と
同数であり、規模としては昨年と変化がなかった。
 昨年の同イベントでは、企業規模でのナレッジ共有の新しい取り組み
や戦略・方式がいくつか提案・紹介された。今年はそれらが進んで定着
期に入ってきたこと、ビジネス上の成果に結び付いていることを実感さ
せる内容であった。
○内容に関する印象
 KMの変化は、いくつかにまとめることができるのではないかと感じ
た。
 ・対象の変化:Content → Context
   従来はナレッジそのもの(Content)を対象にすることが多かった
  が、ナレッジを取り巻く状況(Context)を対象とするように変わっ
  てきた。ナレッジそのものだけではなく、状況を被せて「物語」と
  する方が、共有/伝承が行われ易いとの理由からである。
 ・行動の変化:Collection → Connection
   従来は必要なナレッジ(物)をいかに効率的に的確に集める
  (Collect)かに注力されていたが、ナレッジ(物)と人あるいは
  人と人とを結びつける(Connect)ことに行動が変わってきている。
 ・主体の変化:ツール → 人間/ベテラン → 若手
   やや極論だが、従来はツールの機能の優劣/多少であったりシス
  テムをいかに使いこなすかに関心が払われていた。それらを使う人
  間こそが主役であるとの考えが広まり、その結果人間の心理面にも
  関心が払われるようになってきた。
   従来はベテラン(経験者)からいかにしてナレッジを引き出すか
  に注意が向けられていたが、若手(未経験者)にいかにしてナレッ
  ジを伝えるかに力点が移ってきている。
 事例の発表がいくつかあったが、成功している事例には、次のような
特徴が見られる。これらは従来と特に変わらないものなので、普遍的な
KMの成功要因とも言えるかもしれない。
 ・KM専門部署/専任者が活動を推進している
   決して大きな部署でもないし多数でもないが、組織の中にKMを
  推進するための専門部署/専任者が置かれている。そのことが、そ
  の組織がKMに取り組んでいることを組織内外に示す役割も果たし
  ている。
   専門部署/専任者は、システム部門とは離れた部門に設置されて
  いる。CCO(Chief Culture Officer)がその役割を担っている
  事例もあった。
 ・成果/目標をはっきりと定め、Small Startしている
   多くを求めず、コスト削減/効率性の向上等に目標を絞っている。
  成果を急がず、ゆっくりしかし着実に進めている。
 ・KMと意識させないようにしている
   KMをKMとして行わず、日々の業務と深く関連付けてあるいは
  日々の業務に埋め込んでKMと意識させないようにしている。仕事
  をすること自体がKM活動となっており、人々は負担を感じない。

以上

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◆経済産業新報より「ソフトウェア産業の下請け構造を改革したい
第2次中期計画をスタートさせたIPA」
(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)理事長 西垣 浩司氏)

 IPAの新理事長に、民間のコンピューター大手企業,NECの
元社長である西垣浩司氏が就いた。ちょうど、独立行政法人化の改
革を経て、第2次中期5ヵ年計画をスタートするタイミングである。
同氏に、わが国IT・ソフトウェア産業の現状と世界との比較ベー
スに「国際競争力の強化」について聞いてみた。
日本の金融システムはガラパゴス状態
 若い人がグローバルに活躍して欲しい

・世界で通用しない日本のアプリケーションソフト

──IPAが第二期5カ年の中期計画をスタートすると同時に新理
事長に就任しました。これからIPAが果たすべき役割とは?

 約4年半前に独立行政法人化するまで、IPAは日本のソフトウェ
ア産業の育成、優れた製品づくりを応援してきました。独立行政法
人となって最初の中期計画では、個別企業を対象にした支援策を減
らし、人材育成・ソフトウェア開発の効率化・情報セキュリティ・
OSS(オープンソースソフトウェア)・国際競争力などをテーマ
に精力的に改革を進めてきました。3年半前にはIPAの中にあら
ゆる産業の競争力を牽引するソフトウェアを、品質良く、いかに効
率よく作るかをテーマにソフトウェア・エンジニアリング・センタ
ー(SEC)という組織を作りました。これまでの成果として、プ
ロジェクト診断支援ツールや組込みコーディング作法、プロジェク
ト可視化ツールなどの開発が挙げられます。
 また、昨年IT人材育成本部という組織も立ち上げました。ITS
S(ITスキル標準)や、UISS(ユーザースキル標準)、これ
と組込みソフトの技術標準であるETSSとの整合性を図った新し
い情報処理技術者試験制度を来年4月からスタートさせます。新試
験制度の大きな特徴は、ITパスポート試験というエントリーレベ
ルの試験を新設したことです。理系の学生だけでなく文系、あるい
は企業の事務職に、情報技術について最低限は知っておいてほしい
というレベルの試験です。
 今年からの5カ年の第二期中期計画は、第一期で敷かれた路線が
実行段階に入ります。ITパスポート試験も含めた新試験の実施も
その一つです。この試験を受けるにあたって勉強してほしい内容を
示したシラバスはすでに発表しました。また3年後にはコンピュー
タを利用した試験(CBT)を実施する計画です。

──ところで西垣さんは「日本のビジネスアプリケーションソフト
が世界で通用することは極めて難しい」と発言してきました。その
理由は。

 理由は二つあります。まず日本はパッケージソフトの利用率が非
常に低い。世界では業務用ソフトもほとんどの場合はパッケージを
カスタマイズして仕事を進めています。日本でもさすがに手作りで
はコストが高くてやっていられないので中小企業を始めとしてパッ
ケージに移行していますが、そこでも、SAPやオラクルなどの世
界標準品が多く使われています。また、国産のパッケージが国際的
に通用しづらいのは、日本と世界で言葉や文化、商習慣などの相違
があるためです。日本語をすべて英語に直し、現地の商習慣にも合
わせてカスタマイズすることは、極めて難しい作業です。

・中国銀行がシステムをインドにアウトソース

──三菱東京UFJ銀行が3300億円をかけてシステム統合をし
ました。日本の金融SEの3分の1を動員して、既存の二つのシス
テムをくっつけただけで、パッケージを使ったオープンシステムを
使うという話はまったくありませんでした。

 世界の金融機関はほとんどがパッケージで動いています。ドイツ
銀行はHCLというインドの会社に勘定系システムの開発運用をア
ウトソーシングしていますが、それ以外の系はほとんどがパッケー
ジ活用です。またやはりインドのタタグループのTCSは、ステート・
バンク・オブ・インディアの勘定系システムを動かすのに成功しま
した。この銀行は取引量や支店数が日本のメガバンクにも匹敵する
規模です。さらにタタグループは、世界最大の取引量があると見ら
れる中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)のシステムも手がけてい
ます。
 ステート・バンク・オブ・インディアの例を見ますと、パッケー
ジ利用と共にオープン系で分散処理をするシステムアーキテクチャ
を採用しており、これがプロジェクト成功のキーとなっています。
 日本のバンキングシステムを担ってきたのはメインフレームが中
心でしたが、メインフレームのハードは昔、1台数十億円以上もしま
した。そのメインフレーム1台と同じ程度の能力を持つサーバが今
では1台数十万円から数百万円で使えます。
 オープン系ではこのサーバの能力を徹底的に活用し、ソフト自体
は密結合ではなく、機能別に分離したパッケージ主体のシンプルな
ものにしています。そのため、もし1台のサーバが停止しても周辺
のサーバがバックアップし、システム全体としては障害が起きにく
くなっています。日本のメインフレームによる金融システムはガラ
パゴス状態であり、将来的に今のままでよいとは思えません。どこ
かで決断する時期がくるでしょうね。

・有望なのは自動車や家電の組込みソフト

──国際競争の中で日本のソフトウェア業界が生きる道はあるので
しょうか。

 日本企業が海外に出て行くときに業務ソフトを一緒に持っていく
ことは考えられます。たとえばトヨタのかんばん方式やセブンイレ
ブンの単品管理システムを支えるソフトです。
 ただ世界のデファクトスタンダードを取るのは極めて難しいです
ね。英語や文化の問題はもちろん、これまでも、これは、というも
のは欧米に潰されてきた歴史もあります。気づかないうちにいつの
間にか世界を制覇したゲームのような例はありますが。
 パッケージではなく、非常に特殊で失敗が許されないような個別
システムを作らせたら、日本人はチームワークがよくてきっちりし
た仕事をするので、いい成果が出ると思います。こういう分野の日
本の実力を広く認知させる努力も必要です。
 さらに有望なのが自動車や情報家電に代表される組込みソフトで
す。自動車業界では、JASPR(ジャスパー)という新しいプロ
ジェクトを立ち上げました。アプリケーション以外のソフトウェア
をプラットフォーム・共通化する試みで、SECも協力しています。
これが日本の標準になり、さらに世界の標準になる可能性もありま
す。しかし、日本は携帯電話では大失敗をしました。ドライバ、O
S、ミドルウェア、アプリケーションの各階層のソフトを各メーカ
が個別に開発したため、ソフトウェアの開発費が1機種あたり10
0億円にまでなってしまいました。ところが海外勢は、アプリケー
ション以外は共通のプラットフォームを使うオープンなしくみを使
ったので、サムスンを始めとする韓国勢が一気に事業を拡大させま
した。自動車業界では携帯電話での失敗を教訓に、オープンなプラ
ットフォームをしっかりと定めていって欲しいと思います。

──次に人材育成についてお聞きします。インドと中国は2015
年にはそれぞれ300万人以上の高度なIT人材をそろえる計画で
す。日本の人材はほとんどがそのレベルに達しておらず、数も少な
いのが現実です。

 日本に最高レベルのIT技術者がいないわけではなく、IPAの
未踏ソフトウェアに選ばれるような突出したエンジニア(スーパー
クリエータ)もいます。ただソフトウェアを作る能力は人によって
10倍、20倍の違いがあるので、こういう人を見つける努力を我々も
しなければなりません。
 また日本のソフト作りには、元請けから二次、三次下請けという
産業構造があり、その中ではチームワークが重視されます。すると
コミュニケーションがきちんと取れる人を集める方がやりやすく、
すごく優秀な人が入るとかえってやりにくくなってしまうので、こ
ういう人たちが活躍できる場が非常に少ないのが現状です。また、
産業界がこのような状態にもかかわらず、大学はスーパークリエー
タのような技術者を育てたいと考えており、IT人材育成に関して産
学での乖離があることも事実です。
 人材の量の確保も大きな問題です。私も昨年末から今年にかけて
中国とインドを回ってきましたが、あちらではIT技術者になれた
らいきなり給料が上がっていい生活ができるので目の色が違います。
特にインドは、IT産業はカーストでの区別がされない実力主義の
世界のため、さらにモチベーションが高いと聞きました。
 これらに対して日本は、チームワークでプロジェクトを動かすと
か、アプリケーションの領域に特有の知識(業務ノウハウ)が必要
なソフト作りを重視せざるを得ません。ただ、日本のSIerが中国や
インドでのオフショア開発を活用することを考えると、中国は資本
主義を経験してから時間が短いこともあり、アプリケーションソフ
トを彼らだけに作らせるとまだ完成度が高くありません。インドは
英語圏ですから欧米とは親和性がありますが、言葉の問題があり、
日本に一気に入ってくることはまだだろうと私は予想しています。
こうしたことを考え合わせると、もうしばらくの間は、日本のソフ
トウェア産業も発展基調を保つことができるでしょう。

・日本に欠けているのは技術より構想力や実行力

──ITを勉強した学生を企業は再教育しているそうですね

 そうです。たとえば金融の勘定系のソフトウェアは、ITが分か
っていても金融が分からないと顧客に提案もできません。日本のソ
フトウェアに関する教育方針にも問題があります。ITそのものに
ついては教えるが、それがどういう局面で使われるのか、というと
ころまで踏み込んで教えることが無いのです。
 ただソフトウェア産業が二重、三重の下請け構造なので、下請け
企業では業務ノウハウを身につけることも無く、仕様書にしたがっ
て淡々とソフトウェアを開発する状態になりがちです。3K産業と
か7K産業だと言われてしまうこの悲劇的な構造は、なんとかしな
ければなりません。

──優秀な人材が日本で働く場がないのも問題では。

 未踏ソフトウェアに選ばれた人もグーグルに3人くらい入ってい
ると聞いています。アメリカにそういう個性の強い突出した人材を
生かす環境があるのは事実です。日本に欠けているのは、技術より
も新しいものを生む構想力や実行力だと思います。
 私がNECにいたときに日立と一緒にエルピーダメモリを立ち上
げましたが、国際的な自由競争の中でこの会社を経営していくこと
ができる人材をNECも日立も生み出せなかったことに気づきまし
た。今の坂本幸雄社長は体育系大学の出身ですが、早くから半導体
メーカでITの世界を経験し、国際的に資金集めができるだけのネ
ームバリューもある人物です。
 グーグルやマイクロソフトがなぜ日本にできないかというと、坂
本さんのような人間がほとんどいないからではないでしょうか。そ
ういう人をたくさん育てて、ソフトウェア産業を支えていく人材に
していかなければなりません。
 とにかく世界のソフトウェアの現状を知らなければ、自分自身も
その立ち位置も把握できません。これからの若い人はまだ可能性が
あると思います。とにかく日本の中に閉じこもらずに世界に飛び出
していってほしいですね。

経済産業新報社
http://www.keizaishinpo.jp/

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◆メルマガ「クリエイジ」より新刊・近刊ニュース

戦略と組織関連書籍です。
「組織は戦略に従う」か「戦略は組織に従う」のか。
戦略と組織と業務の三位一体が成功の鍵か。
年金問題などで社会保険庁をみていると戦略と組織と業務の抜本的
見直しが必要と思う。
日本政府にも歳入庁(国税庁と社保庁の統合)などの省庁再編、
全国300市への合併による地域主権など抜本的な見直しが必須か。

西脇隆 クリエイジ 03-3294-0577
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新刊ニュース

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?戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ 日経ビジネス人文庫
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価格:945円(税込)
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日本の組織が苦手とする、相手の強みを弱みに変える逆転の
戦略。これを実現するには強力なリーダーシップが必要だ。
著名な現代の戦史を戦略論、組織論のアプローチで分析し、
何が勝利の条件かを明らかにする意欲作。

プレミアム戦略
遠藤 功著 2007年12月 東洋経済新報社 価格:1,890円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4492532404
レクサスやザ・プレミアム・モルツはなぜ成功したのか?
「キャッチコピー」ではなく「戦略」としてのプレミアムを。
本格的プレミアム論。

ねばちっこい経営?粘り強い「人と組織」をつくる技術
遠藤 功著 2006年12月 東洋経済新報社 価格:1,680円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4492532242
『現場力を鍛える』『見える化』に続く3部作完結編。続ける力、
粘る力こそ最も重要な企業の独自能力だ。

松下電器の経営改革 一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2
伊丹 敬之編著 2007年12月 有斐閣 価格:3,570円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4641163103
日本有数の規模と複雑さをもつ企業において、かつてないほどの
大規模かつ徹底的な経営改革はいかに行われたのか。

戦略の形成 上?支配者、国家、戦争
ウィリアムソン・マーレー編著 歴史と戦争研究会訳 2007年11月
中央公論新社 価格:3,360円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4120038866
前五世紀のアテネから中国の明、第一次大戦に至るまで、統治者
や国家が実際に戦略を形成する際にみられる現実的かつ錯綜した
プロセスについて扱った、共通の分析枠組みに基づく事例研究。

戦略の形成 下?支配者、国家、戦争
ウィリアムソン・マーレー編著 歴史と戦争研究会訳
2007年11月 中央公論新社 価格:3,360円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4120038874
ドイツのヒトラー、イスラエル、そして大戦後のアメリカに至る
までの事例研究。戦略の変遷を促してきた要因、今後の戦略の
変化に影響を与えるとみられる要因も検討。巻末に索引を付す。

組織論 再入門?戦略実現に向けた人と組織のデザイン
野田 稔著 2005年12月 ダイヤモンド社 価格:2,940円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4478430225
本書は、いろいろな組織問題に直面した時に、今一度基本に立ち
返って組織問題の解決に向け、思いをめぐらせていただくための
「再入門」テキストである。どうすれば、戦略実現に向けた人と
組織をデザインできるのか?組織論は、すべてのリーダーの必修
科目なのである。

組織は戦略に従う
アルフレッド D.チャンドラー Jr.著 有賀 裕子訳
2004年6月 ダイヤモンド社 価格:5,250円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4478340234
世界で初めて事業部制を導入したGM、デュポンなど4社の
徹底したケーススタディから変化が求められるマネジメントの
本質を描き切る。

競争の戦略 新訂版
M.E.ポーター著 土岐 坤訳 1995年3月 ダイヤモンド社
価格:5,913円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4478371520
産業が違い、国が違っても競争戦略の基本原理は変わらない。
戦略論の古典としてロングセラーを続けるポーター教授の処女作。

競争優位の戦略?いかに高業績を持続させるか
M.E.ポーター著 土岐 坤訳 1985年12月 ダイヤモンド社
価格:8,190円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4478370192
競争優位の確保が高業績のキメ手である。その源泉は、会社の
どんな部門、どんな活動にも存在する。前著『競争の戦略』の実践版。

最新戦略的企業連携がよ-くわかる本
?会社を強くする"前向きな"連携とは
福山 哲郎著 2007年3月 秀和システム 価格:1,680円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4798016209
Win?Win型の戦略的な連携が新たな道を開く。

戦略プロフェッショナルの心得
永井孝尚著 2008年9月 オルタナティブ新書 新書版判
価格:980円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4990432304
ビジネスの現場で、理論だけの戦略が実行できない理由
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近刊ニュース

戦略とは何か?
リチャード・ウィッティントン 著  須田 敏子、原田 順子 訳
2008年10月17日発売予定 慶應義塾大学出版会
価格:2,940円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4766415574
実際のところ、組織は何に従っているのか?戦略論を目標軸と
プロセス軸とからなるマトリックス上に4分類してその本質的
性格を抽出し、どのような条件下でいかなる合目的的戦略を選択
するべきか、を事例を踏まえながら明快に論じ,「本質を捉える」
ための解説を行う。多様なビジネスシーンに通用する汎用性の
高い戦略論として広いニーズに応えられる、きわめて良質

経営の力学 組織を動かすための実感経営論
伊丹 敬之 著 2008年10月23日発売予定 東洋経済新報社
価格:1,680円(税込)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4492501878
『経営を見る眼』の第2弾。組織に作用する力を読み解き、組織
を動かす勘所を示す。伊丹流の経営の原理原則がわかる。
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