No.7 2007年12月3日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.7 2007年12月3日発行

   
 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 第7号
 

☆☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★☆☆☆☆☆☆★★☆☆★
 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
 第7号   2007/12/3
☆☆☆★☆☆☆☆☆☆☆☆☆★☆☆☆☆☆☆★★☆☆★

編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目次

[学会からのお知らせ]
◆公開フォーラム「グローバル競争下における知の創造と人材育成」開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

◆e-LearningConference2007 Winter開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

◆東京財団主催「経営と戦史にみる『撤退の研究』」開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

◆組織認識論研究部会開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

[学会員からの寄稿、活動報告]
◆日独知的資産経営サミット2007のこと
(あずさ監査法人 知的財産戦略室マネジャー 芝坂 佳子)

◆香港KM協会リッターさんの学会訪問とアジアのKM状況
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 国際部長 進 博夫)

[転載記事]
◆メルマガ「クリエイジ」第174号 2007年11月19日より

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◆公開フォーラム「グローバル競争下における知の創造と人材育成」開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

来る12月22日(土)に、東京経済大学にて公開フォーラム「グロー
バル競争下における知の創造と人材育成」を開催することとなり、
当学会も協賛させていただくこととなりました。
皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。

なお、以下URLに開催のご案内をアップロードいたしました。
併せてご覧下さい。
http://www.kmsj.org/home/archive/20071222.pdf

日時:2007年12月22日(土)午後1:00―5:40
場所:東京経済大学国分寺キャンパス 6号館7階大会議室
主催:知の創造(組織学習・人材育成)研究会
協賛:日本ナレッジ・マネジメント学会

プログラムの紹介
1 基調講演者Francis D. Tuggle教授は、カーネギー・メロン大学
の博士課程で著名なHerbert A. Simon(ノーベル経済学受賞者)
Robert Kaplan教授(バランス・スコアカードの提唱者)に師事し、
Kansas 大の教授等を経て、Rice University、American University,
Chapman Universityの経営学部長を歴任された。著書・論文等は60
以上あり、現在Chapman Universityの教授,INSIGHT CONSULTING
パートナーとして活躍中。

2 日本学術振興会・科学研究費助成研究プロジェクトの研究成果報告
「知の創造を促す組織学習と人材育成」

 日米の主要な自動車、情報機器企業28社を4年間実態調査し、延べ
200名を超える管理者とのインタビュー調査、75の質問票に対する
1106名の回答結果を統計解析し、知の創造を促進する要因を解明、
報告します。

司会・討論者:馬越恵美子氏(桜美林大学教授・異文化経営学会会長)

報告者:植木英雄氏(東京経済大学教授)、植木真理子氏(京都産業大学准教授)
齋藤雄志氏(専修大学教授)、宮下清氏(首都大学東京教授)

3 講演:「情報機器企業、自動車企業における知の創造活動の展開」
講演? 堀越知一氏(富士通株式会社・渉外政策推進本部長)
講演? 阪口正坦氏(日本ヒューレット・パッカード株式会社
            執行役員 HPサービス品質管理統括本部長)
講演? 久米克彦氏(スズキ株式会社・常勤監査役、
            日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事)

4 パネル・ディスカッション
「グローバル競争下における知の創造と人材育成のあり方」
パネラー: 堀越知一氏、阪口正坦氏、久米克彦氏、宮下清氏

 
問合せ・申し込み先:東京経済大学植木研究室
FAX:042-328-7774 電話:049-296-0926)

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◆e-LearningConference2007 Winter開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

日本イーラーニングコンソシアム(eLC)では、来る12月6日(木)
?12月7日(金) の2日間、青山学院大学総合研究所ビルにおきまし
て「e-LearningConference2007 Winter」を開催いたします。

今回の「e-LearningConference2007 Winter」は、広くeラーニング
ユーザーの視点、e-ラーニングコンテンツの作成・開発者の視点、
教育・研修を企画される方の視点等、多岐に渡ってトラック単位に
テーマを設定し、1日を通してじっくりと学んでいただきます。
 12月7日の「特別セミナー」にて、当学会の森田理事長が講演を
することとなりました。

なお、申込受付が本日(12月3日)の日付までとなっております。
ご注意下さい。

■開催日程:2007年12月6日(木)?12月7日(金)  11:00?16:50
      ※12月7日(金)の特別セミナーは9:30?10:30

■会場:青山学院大学総合研究所ビル
(東京都渋谷区 青山キャンパス内)
(地図URL:http://www.aoyama.ac.jp/other/access/aoyama.html
    :http://www.aoyama.ac.jp/other/map/aoyama.html)

■主催:特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアム

■共催:フジサンケイビジネスアイ/(株)シー・エヌ・テイ

■後援:青山学院大学総合研究所
    eラーニング人材育成研究センター(eLPCO)

■協賛:独立行政法人メディア教育開発センター
    教育システム情報学会
    日本ナレッジ・マネジメント学会
    社団法人日本印刷技術協会

■公式スポンサー:株式会社デジタル・ナレッジ

■参加対象:教育システム開発担当者
      教育コンテンツ開発担当者・
      企業内教育担当者教育サービス提供者
      教育機関・研究機関 など

■お申込み方法(事前登録制):
全てのセッションはインターネット上でのお申込みとなります。
公式サイトのページ最下部にある「お申込はこちらから」より
「参加申込ページ」へ移動していただき、お申込下さい。
お申込は、トラック単位(1日通し)の受付とさせていただきます。

■参加費:
1)2日間参加される場合
一般:15,000円/eLC会員:12,000円/学生:6,000円
2)1日のみご参加の場合
一般:10,000円/eLC会員:8,000円/学生:4,000円

■お申込締切:2007年12月3日(月)
※定員に達した場合は、締切日前に受付を締め切らせていただきます。

■お問い合わせ:
日本イーラーニングコンソシアム事務局
TEL:03-5640-1017 FAX:03-5640-1018

■公式サイト:
http://elc.or.jp/forum/Conference2007_winter_pr_1206.htm

■プログラム
12月6日(木)
◆トラックA
「満足度UPをめざすeラーニングの研究?学習支援の可能性?」
◆トラックB
「eラーニング活用事例公開と企業内教育担当者のホンネトーク」
◆トラックC
「かんたんSCORMプログラミング」

12月7日(金)
◆トラックD
「インストラクショナルデザインにおける10のトレンド
? Robert Reiserフロリダ州立大学教授のワークショップに学ぶ ?」
◆トラックE
「事業に貢献するeラーニング活用
?経営者が投資したくなるための考え方と事例の紹介?」
◆トラックF
「実践的eラーニング・コンテンツ制作技法」

■特別セミナー(参加費:無料)

日時:2007年12月7日(金)9:30-10:30
特別セミナー1
「ICT時代の人材育成に貢献するeラーニングプロフェッショナル
(eLP)資格制度」
特別セミナー2
「ナレッジマネジメントの現状と課題」

※各トラック、各セッションの講演概要等の詳細は、Webサイトをご参照下さい。
※プログラムの内容は予告なく変更される場合がありますので、
 最新の情報はwebサイトにてご確認ください。

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◆東京財団主催「経営と戦史にみる『撤退の研究』」開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

 経営においても、また国家戦略においても的確な情勢判断、迅速
な決断とタイミングのよい対策の実行がなによりも大切です。いか
なるケースにおいても、環境の制約というよりも人間の問題に帰着
し、結局は経営者、指導者の能力の優劣にかかってきます。事態の
特質がなんであるのかを看破し、当初の企画の継続的な実現に見切
りをつけることができるのかどうかが指導者の実力なのです。

 そこで、今回の東京財団フォーラムは日本ナレッジ・マネジメン
ト学会理事長で公認会計士の森田松太郎氏と、前・防衛大学校教授、
元一等陸佐の杉之尾宜生氏に、それぞれの専門分野である企業経営
と戦史研究の観点から、過去の歴史や実例に基づいて望ましい戦略
的な撤退の方法についてお話しいただきます。

日時:2007年12月4日(火) 18:30?20:30
場所:日本財団ビル1Fバウ・ルーム(東京都港区赤坂1-2-2)
定員:200名
参加費:無料(事前申込制)
申込方法:以下URLの参加申込フォームよりお申し込み下さい。
http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=65

問合先:東京財団研究部広報(03-6229-5504)

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◆組織認識論研究部会開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

12月16日に今年第3回目の組織認識論研究部会を開催いたします。
ふるってご参加ください。

日時:12月16日(日曜日) 13:30?16:00
場所:神戸大学 経営学部 中会議室

タイムスケジュール(プログラム)

13:30?14:15(発表30分)
宮本琢也(神戸大学大学院博士後期課程)&前川佳一(三洋電機)
「「AQUA」における製品コンセプトの変化とビジネスシステム」

14:15?15:00(発表30分)
小高 久仁子(関西学院大学大学院経営戦略研究科)
「シャープの液晶事業における戦略的意思決定のプロセス」

15:00?15:30
今後の予定、部会運営についてのお知らせ

連絡先・事務局
大阪学院大学企業情報学部 喜田昌樹
電話:06-6381-8434(5314)

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◆日独知的資産経営サミット2007のこと
(あずさ監査法人 知的財産戦略室シニアマネジャー 芝坂 佳子)

2007年9月25日に開催された日独ICサミットについては、すでに、
メールマガジン第五号で岩岡さんがレポートをされていますので、
今回は、少々裏話も踏まえた背景をご紹介したいと思います。

始まりは昨年初夏のこと....
3年前から初夏のパリでは、見えない資産とコミュニティの取組み
をテーマにいろんな国から人が集まる会合が開かれています。その
ときに、日本とドイツの取組みが似ていること、そもそも日本とド
イツは国民性も似ているといわれている…という事実を前に、「じ
ゃ、その二つの国で実際に知的資産についてレポートをしている企
業と、その外野(?)が集まって意見交換をしてみては!」という
話がまとまりました。そして…

クリスマスを前にコトが動く…
昨年12月に東京で開催された知的資産ウィークには関係の外国人も
多く参加しました。そこに、ドイツ側のリーダーであるMart Kivikas
氏も来日していました。すでに、日本ナレッジ・マネジメント学会
は、フランス側と連携し、9月27日と28日にニースでTKF(The
Knowledge Forum)の開催を決めていた事実をしったドイツ側は、
「では、連続したプログラムとして行えば、参加しやすいし、好都
合」ということになり、学会の賛同も得て、まずは、日が決まった
のですが…

やっぱりドイツは遠いのかも…
コミュニケーションが難しいのは、いつでも、どこでもいっしょ。
思いは同じでも、スピード感や気になるところはお国柄。全体プラ
ンがなかなかわからず、そうかといって、フライトやホテルはなん
だかやたら混雑している…。そのうち、夏休みシーズンがやってき
て…とかなりばたばたしました。でも、やっぱり、志が同じなら…

いってよかった。また、やりたい。
シュツットガルトにつき、たくさんの方々が集合しているのを見て、
なんだかうれしくなりました。外国にきているせいかちょっと
“ハイ”になっているところを差し引いたとしても、「見えない資
産がとても大切、活かしたい、もっと会社を組織をよくしたい」と
いう思いを同じくする、実にバラエティ豊かなご一行となりました。
たとえ言葉が通じなくてもPassionがあるなら判りあえる..その
事実を目の当たりにする印象深い場面もありました。
素晴らしい工場に関心、ホスピタリティに感謝、ドイツのおいしい
ビールとお料理(+デザート)に舌鼓をうちつつも、日ごろなかなか
出来ない情報交換の花盛り…と、充実した時間をすごしました。
もちろん、その影にはひたすら心配りをする人たちが…(涙...)

ひとりひとりにありがとうございます!
寸暇を惜しんで作成したパワポが写らないなんて悲しすぎる、ちょ
っと無理して見栄張プレゼンしてしまった、これからのタスクを考
えると面白いかもしれないけど、やりがいありすぎ...など、様々
な感慨があろうかと思いますが、一人ひとりが何か(教えられたこと、
発見、勇気をもらった etc…)を得たに違いないと確信します。誰か
ひとりが欠けての、このサミットはなかった。本当にありがとうご
ざいます。

そして、これから…
日独ICサミットについて、内容をキチンとしりたい方々に朗報です。
素晴らしいサイトが出来ています。

http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/ic-summit/index.html

をぜひ、訪問してみてください。
私たちは、もう次にむかってすすもうとしています。そのときには、
より多くの方々の、いろんなカタチでの参画を、ぜひぜひ、お願い
いたします。

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◆香港KM協会リッターさんの学会訪問とアジアのKM状況
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 国際部長 進 博夫)

香港KM協会のウォルトロート・リッターさんが来日した機会を利用
して、11月22日に森田理事長以下数名の学会員がARI研究所の会議室
に集まり、情報交換をしました。

リッターさんは香港KM協会の会長を2年間つとめた後、現在は対外関
係窓口の理事をされています。日本KM学会の評議員もお願いしてい
ます。フランスのTKF2007にも参加されましたが、他に直近でもシン
ガポール、インド、メキシコなど、非常に活発に世界を舞台に活動
しています。

学会からは、学会の新しい活動状況、来年3月の総会の概要、そして
来年秋に向けて準備を開始したTKF2008の考え方などを紹介しました。
リッターさんからは、香港KM協会の状況、11月末のカンファレンス、
KMSJと同じく10周年を迎える来年のカンファレンスについての説明
があり、さらにアジア各国のKMコミュニティの状況について情報交
換をしました。

アジアでは以前から活発に活動している香港やシンガポール、韓国
に加え、最近では台湾、インド、タイ、インドネシア、フィリピン
など、アジア各国の発展状況に対応して、知を如何に活かしていく
か、KMについての議論が盛んになっています。
日本KM学会も意を同じくするこれらの人たちとの連携を広げる活動
をしていく予定です。

また日本の課題として、これまで培ってきたKMの土壌をさらに新し
い段階に高めていく必要があるでしょう。このためには、我々自身
の活力とグローバルな視点、多様性は欠かせないものです。
皆さんの積極的な参加を大いに期待します。

以上

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◆メルマガ「クリエイジ」第174号 2007年11月19日より

目次
1.ビジネス書「対話」書評
2.人生で感銘を受けた本
[編集後記]

1.ビジネス書「対話」書評 池田和秀

○『図解フィンランド・メソッド入門』北川達夫著
 フィンランド・メソッド普及会著 経済界 2005年10月 
 http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4766783476

 OECDが2000年と2003年に実施した国際的な学習到達度調査でトップ
クラスの結果(なかでも読解力は2回連続で世界一の成績)を出したこと
から、日本でも北欧フィンランドへの注目度が高まりました。本書は、
そのフィンランドの国語教育の手法を紹介し、日本で展開していくことを
めざしたものです。
 
 フィンランドの国語教育は、「グローバル・コミュニケーション力」の習得
をめざしているところに特徴があります。それは「相手がどこのだれで
あろうと、その言うことを理解する能力」「相手がどこのだれであろうと、
自分のいいたいことを理解させる能力」の2側面から成ります。同じ文化
の中にいる者同士なら、いちいち説明しなくても分かり合えるコミュニ
ケーションが成立します。しかし、異なる文化の人たちと意思疎通を図って
行くためには、+αのコミュニケーション力が必要になります。

 そのような能力を育てるために、フィンランドの教育現場では、相手の
意見を正確に理解し、それを解釈し、それに対する自分の意見を述べる
という「対話」の訓練を、小学生の段階から繰り返しています。それは、
相手の主張がどんな事実を根拠にしているのかを正確に認識し、その
根拠たる事実を検証し、相手が理解し納得するように自分の意見を表明
する、というプロセスを踏んでいくものです。

 国際化が急速に進展する中で、「言わなくても分かる文化」を持つ日本
だからこそ「グローバル・コミュニケーション力」の育成は必要です。ところ
が、「現在の日本の教育からはそれがまったく欠落している」という危機感
が著者にはあります。それがフィンランドの方法論に学んでいこうという
提案につながっています。著者は元外交官です。国際交渉で不可欠な
能力は何かを現場で実感してきた体験が、本書を生み出しているのだと
思います。
 
○『あなたへの社会構成主義』ケネス J.ガーゲン著 東村知子訳
  ナカニシヤ出版 2004年11月
  http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4888489157

 「学力世界一」で注目されるフィンランドの教育に対し、好成績をあげた
理由のひとつに「社会構成主義的学習観に根ざしていること」を指摘
する研究者がいます。

 社会構成主義という言葉は、ビジネス書にも登場することがあります。
例えば、高間邦男氏は『学習する組織』(光文社新書)のなかで、企業の
組織変革を成功に導くプロセスのひとつとして「意図的に社会構成主義
的な学習が起きる場」を設定することをあげています。

 社会構成主義は、知識を構成する主体は学習者自身であり、学びは
他者との「対話」を通して実現するという考えに立っています。フィンランド
の授業は最初から最後まで対話で成り立っており―それはテキストとの
対話であったり、生徒同士の対話であったり、教師と生徒の対話であったり
するわけですが―まさにその体現だと感じられます。

 「社会構成主義とは何か」について、私自身がまだ探究の途上にある
ため、ここで深く展開することは出来ませんが、その過程で手に取った
本書は入門書として最良の書でした。社会構成主義の第一人者によって、
理論的背景と展開が俯瞰的に述べられているからです。理解が難しいと
感じる部分も多々あるため本書のすべてを十分に了解できたとはいえない
ものの、「対話」によって企業内やコミュニティの対立を解決に導いた紹介
事例などを読むと、社会構成主義的なアプローチに可能性を感じます。
価値を認め合うことで新しい未来像を生み出すという創造的な営みが
そこにあると思えるからです。

2.人生で感銘を受けた本 池田和秀

○『ワークショップ?新しい学びと創造の場 岩波新書』
  中野民夫著 岩波書店 2001年1月
  http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4004307104

 私はいま、ワークショップの企画やファシリテート実践に取り組んで
いますが、それは本書との出会いがきっかけです。自分がこれまで
経験してきた一方向の知識の伝授や指示というピラミッド型の関係
ではなく、双方向型・参加体験型の学びと創造の手法があることを
ここで知り、私はファシリテーターとしての学びをスタートしました。
 
 この本は、ワークショップの定義や歴史を概説した上で、著者が体験
したワークショップの実際の様子を伝え、その意義と可能性を展望する
ものになっています。ファシリテーターに必要なスキルや態度、プロ
グラムの作り方といった実際上のアドバイスもあり、ワークショップの
理解と実践に役立つ書だといえます。
 
 いま改めて本書を読み返して共感するのは、「理性偏重ではなく、
ボディ=身体、マインド=知性、スピリット=霊性・直感、エモーション
=感情」という「人間にとって重要な四つの側面からのアプローチ」を
大切にして、その統合を指向していることです。「それぞれの要素が
統合された時、全体的な学びや創造が可能になる」という中野氏の
主張は、私自身のワークショップ体験にも重なるものです。

 学びとは、頭だけではなく、感情や身体、直感レベルでも受け止め
られたときに、本当に自分のものになるものなのでしょう。

○『紛争の心理学―融合の炎のワーク 講談社現代新書』
  A.ミンデル著 永沢哲監修 青木聡訳 講談社 2001年9月 絶版
  
 私がファシリテートをするときに依拠している視座のひとつに、プロセス
ワークがあります。プロセスワークは、ユング派の臨床心理学者として
スタートしたアーノルド・ミンデルが創始した心理学の理論と実践の体系
です。この体系が他の心理学派に比べてユニークなのは、個人を対象
にするだけではなく、グループを視野に入れてそこにある対立の解決を
指向していることです。グループを対象にしたその実践は「ワールド
ワーク」と呼ばれています。異なる利害、性、人種が深刻に対立する
深刻な現場が、ワールドワークの舞台となっていきます。

 本書ではミンデルの実践事例が紹介されており、紛争まっただ中の
北アイルランドでテロリストと向き合いながら、参加者間の和解を実現
した経験も記されています。「なぜそんなことが達成できるのだろうか」
という驚きが、私がプロセスワークに関心を持った出発点でした。

 ワールドワークでは、場に起こるすべてのことに意味があるととらえ、
参加者全員が場が必要とする何らかの役割を持ってその場を構成して
いると考えます。また参加者の発言だけでなくその深層にあるものにも
まなざしを向けます。このような場に対する視点は、私がファシリテート
をする際のメタスキル(スキルを超えた態度)として支えになっています。

 米国では、企業内の葛藤や停滞する組織の変革にもワールドワーク
のフィールドは広がっています。実践の広がりと積み重ねによって理論
の体系化が進むことに私は期待をしています。
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池田和秀(いけだ かずひで)略歴
 音楽ライター。ワークショップ企画&ファシリテーター。日本シベリウス
協会運営委員。日本ファシリテーション協会会員。MOI教育研究会会員。
立命館大学一部法学部卒。衆議院議員秘書を経て、フリーの音楽
ライターとして活動を開始。北欧フィンランドの音楽教育を取材したこと
からフィンランドの教育手法に関心を持ち、現地取材を重ねている。
その体験をふまえてフィンランドの教育手法を日本社会に生かすワーク
ショップを企画・開催している。参加型学習やまちづくりワークショップの
ファシリテーターとしても活動中。主な執筆作に「小さな音楽教育大国・
北欧フィンランド?シベリウス音楽院の指揮者教育を探る」(『音楽の友』
2006年5月号)、「シベリウスからはじまった国づくり?北欧の音楽大国・
フィンランドの源泉をたどる」(東芝グランドコンサート2007 フィンランド
放送交響楽団来日公演プログラム)、「自学力に根ざすフィンランドの
芸術家教育 学力世界一との共通項」(都留文科大学『地域交流センター
通信 Vol.11』)など。
Blog http://blog.livedoor.jp/kiitos_i/
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[編集後記]
 池田和秀氏は彦田美香子氏のご紹介で執筆を依頼し快諾いただいた。
私自身、対話力の不足を感じることは多い。小学校時代に対話の授業
がなかったためかも知れない。国会答弁などをテレビで見ていてもそう
思う。フィンランドの授業方式の普及が大切ではないか。
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今日のコラム「地方分権改革」
 政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事
会長)は16日、中間報告をまとめた。委員会は中間報告の内容を踏まえ、
来春以降、福田康夫首相に順次勧告する。勧告を受け政府は「地方
分権改革推進計画」を策定し、2010年に地方分権改革一括法を制定し、
具体的な改革の実施を目指す。
 明治維新に廃藩置県(1871年)で中央集権国家となったが、国と県と
市町村の2重3重行政で複雑かつ縦割りの補助金、地方交付税、税金
などで行政の不効率が目立つ。2015年を目標に廃県置市とし、全国を
300の政令指定都市と国の2階層にフラット化すれば、政治行政が住民
本位となり3割以上効率化し、国民負担率は40%から25%と減税が
可能となるのではないかと考える。
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai29/29shiryou2.pdf

「二つ三つ木の実の落つる音淋し」正岡子規

(推薦書籍)
マニフェスト革命?自立した地方政府をつくるために
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4324080828
ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革
?自治体が変わる、地域も変わる
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=432407397X
地方分権改革 行政学叢書 5
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4130342355
官のシステム 行政学叢書 4
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4130342347
「最後の社会主義国」日本の苦闘
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=462031806X
地域再生システム論?「現場からの政策決定」時代へ
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4130322109
東京からはじめよう?国の再生をめぐる9つの対論
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4478002681
図説地方財政データブック 平成19年度版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4313120629
地方財政システム論
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4641183597

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