No.55 2012年3月21日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.55 2012年3月21日発行

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第55号  2012/3/21
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 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次
◆第15回年次大会の総括
◆日本ナレッジ・マネジメント学会年次大会報告
◆第15回年次大会の写真集
◆次回TKFの実行委員会メンバーを募集します
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号投稿募集のお知らせ

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◆第15回年次大会の総括
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事長 森田 松太郎)

日本ナレッジ・マネジメント学会の第15回年次大会と会員総会が、早稲田大学
キャンパス11号館の9回913教室で2012年3月3日に開催された。
 
今回のテーマは「多様性の知」であった。今回は例年になく多数参加され、特に
女性発表者が多かったこともあり女性の参加が多かった。本学会が発足した頃、
アメリカを訪問しクレアモントのホテルでドラッカー先生のセミナーを受けた。
その際に先生は、「今回の参加者の中に女性が少ない。アメリカも20年くらい
前はそうであったが、今日ではセミナーを開催すると半数くらいは女性である。
そのうちに日本でもアメリカと同様に女性の活躍が始まる」といわれていたが
今回あらためて先生の言葉を思い出した。

年次大会は学会理事長の挨拶に始まり、早稲田大学大学院教授の花堂 靖仁大会
委員長から挨拶を頂戴した。

10時から学会山崎専務理事の特別講演「多様性と創造性の考察」というテーマ
で基調講演がおこなわれた。山崎専務の日頃の蘊蓄を傾けた講演で、多様性の
広がりと世の中の変遷について想いを新たにした。多様性による個人の潜在力
の発揮、もの支配論理からサービス支配論理への転換等時代の最先端を行く話
に大変印象を受けた。

次いでANA人事部いきいき推進室の槙田 あずみさんから「我が社のダイバー
シティ」という題で、価値創造の源泉は人であるとしてANAの人材への投資
について報告があった。
人、特に女性の能力をいかにしてフルに発揮させるか、明るく元気にいきいきと
前向きに活躍すること、そしてお客様への感動を提供するとともに人材の開発・
活用の現実について発表された。

午後の部は発表者が多く、2つの会場に分かれて報告がなされた。

セッション1会場では、平田 未緒さんによる「主婦パートが<売るプロ>になる
仕組み・属性を見ず人を見て多様な能力を企業に」というテーマで、Aコープ
こま野のケースについての報告があった。多様な人材(家庭の主婦)を如何に
して売るプロにするかについての報告であった。

次に小石 祐介氏による「ソーシャルメディアと多様性に付いて」の報告があり、
今世界では革命が起きているとの報告があった。

次いで八代 英美さんから「日本企業のダイバーシティとイノベーション」の
題で、日本的経営の課題と展望について質問事項に基づいた分析が発表された。
最後は安田 歩氏から「テレビ視聴の多様性とロケーティングフリー視聴」に
ついて報告があった。テレビ視聴に革命をと言う提案は新鮮であった。
 
セッション2会場では、フランスより来日した嶋田 さくらさんから「ダイナミック・
ケーパビリティの実践:異世代間におけるナレッジとコンピテンシーの相互伝達の比較」
武田 和宏氏による「金融<知>」、
林 弘夫、椙村 茉莉子氏による「世界のCEOが考える変革とIBM による
プロフェッショナルのネットワーク化の取り組み」、
茂木 圭介氏による「公正な人事評価・人材採用に関する研究、
最後に望月 恒夫氏による「知的資産経営ツールに関する考察」で締めくくった。
今回の年次大会はテーマの多様性にあるように、多彩な発表が行われた。
特に目立ったのは女性の発表が多かったことである。
午後一番に理事会が開催され次いで会員総会が開催され、事業報告、決算案が
承認された。次いで新年度の事業計画と予算が提案されいずれも承認された。

セッション終了後に学会の活動計画の概要が報告された。
2012年4月に白桃書房から発刊される予定の「場の力」並びに、本年に予定する
ロシア ウラジオストクにおける久しぶりのTKF開催計画及び学術会議への
参加について報告があった。

研究会終了後、早稲田大学教職員食堂において懇親会が開催された。
当初は着席で開催の予定であったが、当日申し込みの参加者が多く急遽立ち席
に変更されたが嬉しい悲鳴であった。
 
今回は研究会のテーマにあるように、多様性に富みまた多数の女性の参加を見、
今後の学会の方向を示すものであった。

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◆日本ナレッジ・マネジメント学会年次大会報告
(多様性研究部会 部会長 澤谷 みち子)
 
今年の日本ナレッジ・マネジメント学会の年次大会のテーマは「多様性の知」。
今年で15回目となる節目の年に“多様性”というテーマが選ばれたことを感慨
深く思いながら早稲田の門をくぐった。
 
私は日本ナレッジ・マネジメント学会で「多様性研究部会」の部会長をしている。
この部会は、2008年に構想し、2009年から具体的に”多様性が”が組織にどの
ような価値をもたらしているのかを研究する活動を行っている。今回の年次大会
では、ナレッジ・マネジメントの様々な部会の方や外部の方達が多様性をどのよ
うに論じるのかを大変楽しみにしていた。
 
冒頭、森田理事長より東日本大震災の被害についての考察があり、金銭的な損失
は、第二次世界大戦の700兆円(人的な損失はのぞく)と比較すると、およそ
20兆円プラスαを想定したとのお話があり、更に、こうした今こそ、私たちが
持っている「暗黙知」を言語化する(言葉に出す)ことで「形式知」へ変えて
いくチカラが求められるとのお話があった。
 
大会委員長の花堂 靖仁(早稲田大学大学院教授)様からは、今何故多様性が
求められるのかという視点から、かつて男性女性と言う性差に基づく組織マネジ
メントに関する議論があったが、現在では企業の価値はマイクロソフトなどの企
業等を見ても財務諸表だけでは価値が計れない時代となっている。こうした現代
においてはいかにして多様な価値を組織に行かし、組織価値を高めるかが、ど
のような組織においても求められ、その意味でもこの機会を活かしていただきた
いとのお話をいただいた。
 
基調講演の山崎 秀夫さん(野村総合研究所シニア研究員)は「多様性」につい
て、何を多様性と捉えるかから始まり、市民社会の歴史や現代社会の抱える課
題等、様々な視点で論理を展開し、現代は「もの支配論理」から「サービス支配
論理」への転換期であると論じた。そうした組織におけるキーパーソンは多様な
個人である。こうした観点から、組織に求められる多様性を行かす仕組みとして
いくつかの提案があった。
1.ジョブチャレ・・自分で手を挙げて参加する人事制度
2.ボランティア休暇(プロボノ)
3.女性が活躍するチャンスの拡大
4.中途採用社員の活躍支援
5.外国人社員の活躍支援や同性愛婚支援
6.ソーシャルビジネスの支援。
いつもながら未来へのワクワクするような期待を感じさせる講演でスタートした。
 
特別講演はANAいきいき推進室 室長 槙田 あずみさん
ANA(全日本空輸株式会社)は、私自身が38年間のサラリーマン生活を送った場
でもあり、数年前から多様な人材の活躍に焦点を当て、いきいき推進室という
部門を本社の中に立ち上げ、実際に様々な活動を行ってきている。私自身も見
聞きしてきた様々な取り組みをご紹介したく、今回特別講演をお願いした。
 
ANA全体では社員の男女比は半々だが、その年齢構成を見ると高齢者に偏る
男性と、若年層に偏る女性との間に大きな隔たりが見られる。
また、航空機の運航を担う様々な部門がそれぞれ独立して存在し(例えば客室
本部、整備本部、運航本部等)、そうした部門ではほとんど他部門との交流が行
われないと言う特殊な組織形態でもある。

いきいき推進室は企業の活力促進を目的としてスタートし、まずは女性の活躍
推進から活動を展開してきている。女性が長く働き続けられることを考え、様々
な育児と仕事の両立支援を行ってきた結果、懐妊育児休暇は2010年度で349人が
取得するという実績となっている。併せて2009年には次世代育成支援対策推進法
による厚生労働大臣の認可(くるみんまーく)も取得した。いきいき推進室の
設置後は女性の依願退職率も年々減少し、現在では2000年度に比較すると半分
以下となっている。(2010年度実績4%程度)
 
また、女性対象のキャリアに関するアンケートを2007年に実施し、同様のアンケ
ートを昨年再度実施している。この間で見られる大きな変化は、2007年に女性
の中で多かったライフ重視派がバランス派へと大きくシフトしているという結果
だ。総合職女性の中では以前からキャリア派、バランス派が主流だったが、一
般職、客室乗務員においてもライフ重視型がバランス派へシフトしているのが今
回の大きな特徴だった。今後の活動としては、公募による職掌転換制度(特定
地上職賞→総合職、客室乗務員→総合職)や、わくわく休職制度(留学・他企業
での就労、ボランティア・スポーツも可)、社員の海外派遣機会の拡大、Global
job posting japan head office(海外スタッフも対象の宮内事業所の公募)、
Exchange program、外国人社員の新卒採用など、基調講演で山崎さんがお話し
していた多様な人材が活躍する組織に求められる要素が、具体的な形として実
施されていることを確認した。
 
最後に、ANAの最近の事例を紹介するビデオが流された、ものからサービスへと
組織のあり方が変化する中で、核となるのは人の価値に他ならないということを
実感させる内容を実例で紹介していた。チョット、ほろっとする内容で、私も
胸が熱くなった。
 
午後は日本ナレッジマネジメント学会の年次総会で、議案は無事承認された。

総会後は研究発表が二つの会場で実施されたため、私は913教室のセッション1に参加した。

●この続きは、以下のURLでご覧ください。
http://www.kmsj.org/archive/20120303report.pdf

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◆第15回年次大会の写真集はこちらです。
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 メルマガ編集長 松本 優)

http://www.kmsj.org/archive/20120303photo.pdf

 

◆次回TKFの実行委員会メンバーを募集します
(日本ナレッジ・マネジメント学会 事務局)

次回The Knowledge Forumは、本年秋にロシアのウラジオストクで開催予定です。
そこで、TKF実行委員会の構成メンバーを若干名募集します。
申し込み期限は3月31日です。

連絡先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp

 

◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号投稿募集のお知らせ
(『ナレッジ・マネジメント研究年報』編集委員長 植木 英雄)

『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号の投稿(論文および研究ノート)
を3月末日まで引き続き募集しております。

投稿原稿は投稿規程と執筆要項(学会HPリンク先参照)に基づき、
2012年3月31日までに3部をメディアと一緒に学会事務局 研究年報
編集委員会宛てに送付してください。

未だ投稿希望を申込れていない方は、編集委員長宛てにテーマと
論文または研究ノートの応募区分を大至急連絡願います。

投稿は最近年の年次大会、研究部会等の発表者以外でも自由に投稿
できます。会員の皆さんの奮っての投稿をお待ちしております。

「ナレッジ・マネジメント研究年報」投稿規定
http://www.kmsj.org/news/nenpou_kitei.pdf
「ナレッジ・マネジメント研究年報」執筆要項
http://www.kmsj.org/news/nenpou_youkou.pdf

連絡先:研究年報編集委員長 植木 英雄 h-21ueki@tku.ac.jp
原稿送付先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局研究年報編集委員会宛
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル4階


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<編集後記>
メルマガの内容についてのご意見、ご感想及びメールアドレスの変更などは
以下のアドレスにお願いします           (編集長 松本 優)

学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp