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日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
第61号 2012/9/24
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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局
□ 目 次
◆第4回ナレッジマネジメント講演会を開催いたします。
◆東海部会企業調査プロジェクト研究成果発表会のご案内
◆知の創造研究部会10月19日研究会開催のご案内
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第12号の投稿募集について
◆台湾国際KMフォーラム参加報告
◆<特別寄稿>スマート革命-スマート機器による囲い込みの時代の始まり-その3
————————————————–
◆第4回ナレッジマネジメント講演会を開催いたします。
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)
第4回のナレッジマネジメント講演会は23年に渡る海外での豊富なビジネス
経験に基づいたグローバル思行(思考・行動)についての講演を行います。
本田技研工業の英国、米国での豊富なご経験を基に真の顧客志向やグロー
バルなマネジメントについてお話しいただきます。
実体験に基づいた貴重な講演会です。皆様の積極的なご参加をお待ちして
います。
●今なぜグローバル思行(思考・行動)が求められるのか
-23年の海外ビジネス経験に裏付けられた、真の顧客志向、マネジメント-
・会 場:千代田プラットフォームスクエア会議室401
東京都千代田区神田錦町3‐21
地下鉄東西線竹橋駅より徒歩2分
周辺地図 http://yamori.jp/access/
・日 時:2012年10月10日 (水) 19:00-21:00
・参加費:本学会員 無料、会員以外1,500円
・講 師:竹村 英雄 (たけむら ひでお)
NPO法人 顧客ロイヤルティ協会理事
(財)生涯学習開発財団認定コーチ
・主な経歴
1966年 本田技研工業(株)入社
生産設備エンジニアリング、労務人事、米国でのEPA自動車排気ガス認定な
ど異職種を経験、更にホンダで最初の汎用機事業海外工場を「需要のあると
ころで生産する」思想のもと、設立から、採用、生産、経営に至るまでのす
べてを米国で行う。この間に創業者の本田総一郎(故人)からホンダのDNAを
現場で刷りこまれ、その時の気づきをマネージメントに生かし続ける。
1988年 欧州でのブランドの統一 (ヨーロッパ本社 UK)
その後、北米に駐在 アメリカンホンダ副社長として、サービスを構造化し、
北米自動車業界のサービス進化を追求実践した。「顧客の松明を持つ男」、
「北米で最もお客様を守りとうした男」と言われている。
・その他:講演終了後に懇親会を予定しています。(実費清算)
・お申込方法:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局へ
1.会員の種別(個人・法人・非会員)
2.氏名
3.所属を記したメールで申し込んでください。
申込先E-Mailアドレスは kms@gc4.so-net.ne.jp です。
申込メールの件名は「10.10 講演会参加申込」として下さい。
※詳細は、以下のURLを参照してください。
http://www.kmsj.org/news/2012/09/201210104.html
・問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局(kms@gc4.so-net.ne.jp)
◆東海部会企業調査プロジェクト研究成果発表会のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)
今回は、トランコム株式会社(http://www.trancom.co.jp/)様にご協力いた
だきました。その好業績の秘密についての研究成果を披露し、ご議論賜りたく、
下記セミナーを開催いたします。ご興味のある方はもとより、不況下でも高成
長・高収益のヒントを掴まれたい方も、是非ともご参加ください。
・日時:10月15日(月) 18:00-20:00
・会場:株式会社アタックス 2Fセミナールーム
名古屋市中村区名駅5-27-13
http://www.attax.co.jp/company/nagoyamap/
・内容:
◇トランコムのビジネスモデル
株式会社ISOWA 代表取締役社長 磯輪英之氏
◇トランコムの組織風土とリーダーシップ
株式会社アタックス 代表取締役 西浦道明氏
◇トランコムの経営品質
名古屋大学 教授 栗本英和氏
◇トランコムのコア・ナレッジ
名城大学 教授 大西幹弘氏
◇質疑応答
・会費:2,000円
※当日現金で承ります。請求書は発行致しませんのでご了承ください。
・定員:50名(先着順)
・申し込み方法
株式会社アタックス内 日本ナレッジ・マネジメント学会東海部会事務局に電
話で、またはアタックスホームページセミナー申し込み欄からE-Mailでお申し
込み下さい。
https://www.attax.co.jp/seminar/form.html
・お問合わせ先:日本ナレッジ・マネジメント学会東海部会事務局
〒450-0002
名古屋市中村区名駅5-27-13 名駅錦橋ビル
(株)アタックス内 担当:鈴木
TEL(052)586-8816
ホームページhttp://www.kmsj.org/tokai/
◆知の創造研究部会10月19日研究会開催のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事・知の創造研究部会長 植木英雄)
第21回研究会を下記の要領で行ないますので、ご参集願います。
今回は、(株)日立製作所情報・通信システム社 スマート情報システム統括本
部長の渡辺 薫 氏をゲスト講師に招聘して、同社が開発した「協創的」アプロ
ーチやエスノグラフィー現場調査を交えた感動体験による変革のソリューショ
ン手法や事例について詳しく講演して頂きます。
また、この「感動」のソリューション手法を適用した様々な企業やコミュニテ
ィにおける成功事例に関して、ワークショップの状況などをDVD、PCでのデモ
映像を交えて説明して頂きます。その後で、参加者の皆さんとの自由討論や意
見交換などの場を共有して頂きまして、お互いに知の交流を深めたいと思います。
今日企業組織や社会の変革、およびその変革を主導するリーダーシップがあら
ゆるところで急務とされていますが、その実現は様々な壁の障害によって、こ
れまで極めて困難とされてきました。
参加者の皆さんは、目から鱗が落ちる感動体験とマインドチェンジにより、実
現困難と言われている「変革と創造の実践知」を共感し、学ぶことが出来ます。
【研究会の要領】
日時:10月19日(金曜)午後6:10-8:30分
場所:大手町ビル5階533号室 (東京経済大学葵友会サテライトオフィス)
テーマ:感動体験による変革のソリューション手法と成功事例
講師:、(株)日立製作所情報・通信システム社 マート情報システム
本部長 渡辺 薫 氏
参加費:無料(一般・会員参加者は会場・資料の準備上、10月10日までに
部会長宛てに下記のフォーマットで出欠をメールで返信願います。)
第21回知の創造研究会(10月19日)の出欠ご連絡のお願い:
************************フォーマット************************
第21回研究会: 参加_ 欠席_(該当欄に○を記入、または削除)
氏名:
所属:
**********************************************************
それでは、次回10月19日の研究会への奮ってのご参加をお待ちして
おります。
植木英雄 (東京経済大学教授)
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第12号の投稿募集について
(『ナレッジ・マネジメント研究年報』 編集委員長 植木英雄)
『ナレッジ・マネジメント研究年報』第12号の投稿(論文および研究ノート)
を募集いたします。投稿規程と執筆要項(学会ホームページリンク先に掲載)
に基づき、2012年10月31日(水)までに投稿原稿とメディアを学会事務局研究
年報編集委員会宛てに送付してください。
なお、投稿を希望される方は9月28日(金)までに投稿の意思と題名を編集委
員長まで事前にメールでお知らせ願います。
(編集計画の参考にさせていただきます。)
投稿原稿は最近年の年次大会、研究部会等の発表者以外でも投稿できます。
会員の皆さんの奮っての投稿をお待ちしております。
「ナレッジ・マネジメント研究年報」投稿規定
http://www.kmsj.org/news/nenpou_kitei.pdf
「ナレッジ・マネジメント研究年報」執筆要項
http://www.kmsj.org/news/nenpou_youkou.pdf
連絡先:研究年報編集委員長 植木英雄 E-Mail: h-21ueki@tku.ac.jp
送付先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局 研究年報編集委員会 宛
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル4階
◆台湾国際KMフォーラム参加報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事 久米克彦)
去る8月23日及び24日の2日間にわたり、台湾政府経済局工業部主催でナレッジ
マネジメント国際フォーラムが開催されました。 当学会を通じて4名の講師
派遣が要請され、筆者も講師として参加したので、以下概略及び印象深かった
ことを中心に報告します。
1.フォーラムの骨子
日時:2012年8月23日-24日 9:00-16:30
場所:台北市
主催:台湾政府経済部工業局
実施:中国生産力中心
規模:参加人数約100名(主に台湾企業から)
テーマ:KMの新しいトレンドと文化的側面
2.説明
1)フォーラム主催について
これは中華民国政府経済部(日本の経産省に当たる)工業局が、その予算で外
郭団体である中国生産力中心(China Produtivity Center 以下CPC)に実施
を委託したフォーラムです。
CPCは日本の生産性本部に当り、フォーラム参加者はCPCのコンサル先の台湾中
堅企業の経営者、従業員スタッフ合計で約100名とのこと。
場所は政府系のビル内にある200名ほどが入れる会議室が使われていました。
会場は台北松山空港から車で15分程度の台北市のセンターにあり、ホテル街も
そこから車で10分以内の距離で全体として効率的といえます。
更に我々日本人講師4名に対しホテルの設定、移動や食事などの手配について
はCPC側の配慮が行き届いていました。
時あたかも台風14号が襲来しており、フォーラム自体の開催が危ぶまれていま
したが、無事2日間フルで開催できました。
2)フォーラムの構成、
<23日 9:00-16:30>
・挨拶 経済部工業局 科長 林俊秀
中国生産力中心(CPC) Manager 劉武
・講演「台湾KMの発展と挑戦」 CPC Director 陳詩龍
台湾のKMについてのこれまでの流れを概観し、今後どちらの方向に向かうべき
かを説き特に学習型組織をキーワードにしている。
台湾のKMは政府のバックアップの下、既に成熟期を迎えている。知の本質であ
る無形で人に内在するものを使い、そこから有形の将来を確保することが重要
で、今後更にKMへの積極挑戦を図る。知識創造により企業のイノベーションが
もたらされる観点から、知識力を活用し革新力の基礎を作り上げる事が必要で
ある。
・事例発表「tsmcの持続的改善とKM」
Taiwan Semiconductor Mfrg Co.,Ltd CKO Jenna Chang
(会社についてはhttp://www.tsmc.com 参照)
台湾の半導体メーカーにおける改善運動の持続的活動の内容とKM活動について
の報告で、そのための革新的手法として4M1Eを実施。
Manpower(特に設計部門)、Mechanism(キャリアデベロップとインセンティブ)
Material(好事例・手法の知識化)Method(発表会と経営による奨励)
Environment( これら4Mを支える企業の環境整備)が4つのMと一つのEとなっ
ている。当社は小集団活動を軸として従業員を如何に持続的に全社的運動に参
加させるかに腐心し、そのための仕掛けやインセンティブを工夫してきた。そ
の結果がANQ(Asian Network for Quality)での受賞(2012年香港)に結び
付いた、としている。
・講演「多様性とKM」 KMSJ専務理事 山崎秀夫
このところの日本家電業界の相次ぐ損失決算や撤退騒ぎの事象には、実は先進
国共通の経済成熟化と低成長という背景があり、これまでの工業化社会から自
律化社会に向かう中での必然的帰結であった。特に工業化社会の中で巨大化し
た大企業では縦割り主義が進み、かつて有していた創造性、経営スピード、世
の中の多様化への対応力を失ってきている。
米国のアップル社のiPadが何故日本企業では開発できなかったのか、此処に大
きな問題が存在していた。日本企業は事業部制的縦割り主義で、これまでの下
請け会社を含む効率化を目指した垂直統合により、高品質製品生産に傾注して
きた。だがこれでは時代に対応した新しい市場開発は不可能である。
もし日本企業が生き残りを目指すなら、今後はあらゆる分野を視野に、色々な
異業種と共に水平分業による新たな市場開発を目指すことが必要である。
例えばテレビ、スマホ、パソコン、車を統合した市場を開発することが重要で
ある。リコーのQuampやトヨタの「Toyota Friend」などが将来の方向を示して
いる。
・事例発表「知識創造・知識交流を促進する場」
(株)リコー IT/S本部 ITインフラ統合センター所長 若杉直樹
リコーのテクノロジーセンターが神奈川県海老名市に出来た。リコーの創業者
である市村清の三愛精神に基づき、トップはテクノロジーセンターのコンセプ
トとして「技術者の気づきの場と社員のコミュニケーションとリフレッシュの
場(インフォーマルな情報共有・交換の場)を目指したものである。
建物全23階中基本的には各階ごとのコラボレーションスペースの他に3階ずつ
まとめた7つの共有スペースを作り目的を達成しようとしたものである。中で
も常設コラボスペースとして知の共有・知の創造を行うために、
4階のスペースA:「次の製品に繋がるアイデア発想のため、世の中/自社を知
るために最新の自社製品を展示し、同時に顧客の声を把握する」場。及び
7階のスペースB:「次の製品に繋がるアイデア発想のため、自社/他社を知る
ことを目的に他社製品の展示や他社製品の『バラシ』いわゆるティアダウンを
行いその展示を行う。」が用意された。
また他の階では技術屋諸先輩のOBの匠の技の継承にも意を用いている。
知識共有をベースに具体的な知識創造のために物理的なスペースや環境を整え
ているのがこの技術センターである。当然のことながら実際にその運営に当た
っては、企業環境への対応に追われる経営者と技術者たちが望む場のあり方と
の間には葛藤があったこと等、悩みなども含め報告がなされた。
<24日 9:00-16:15>
・事例発表 「KMと製品開発・継続的改善及び実現のためのプロセス」
AsusTec Computor Inc., CKO 呉祟文
Asus社に於いては、KMの効用を企業として位置づけ、企業の知は従業員が有し
ていることを認識することが必要である。品質管理、新製品開発、市場での競
争のためにKMを具体的に実施することが重要であり、特許はこうしたKMの成果
である。また企業がこれらの要件を満たし生き残りを図るためには、持続的イ
ノベーションを絶え間なく行っていくことが求められる。
・講演「企業経営における『型』と『場』」 KMSJ専務理事 久米克彦
日本の伝統的芸能(能、茶道、華道、剣道など)を習うにはまず「型」から入
る。型にはそれまでの先人達の経験や背景となっている文化が含まれており、
型を習うことでこれらを一緒に知らず知らずの間に学ぶことになる。これは農
業などでも言えることで色々な型があり、最初はこの型を学び自分のものにす
ることにより、先人たちの持っているノウハウや知恵の成果を使うことが出来
る。
型は守・破・離のプロセスを通して新しい型の段階に移ることになる。このプ
ロセス毎に「場」が必要となる。場は公式の会議だけでなく、インフォーマル
な場を使って新たな知の創造を行い次のステップを踏むことが出来る。
企業においても新入社員はまずその企業の型を学ぶことから始め、それに習熟
することで先輩から企業での仕事のノウハウだけでなく企業風土をも学ぶこと
にもなる。習熟する段階で型の改善を行い、更に場での議論により新たな型を
生み出すことに繋がる。企業の知の創造はこうした絶え間のないプロセスのう
ちに、色々な場での知の創造過程を経て、新しい型への到達あるいは離陸がな
される。
・事例発表「知識創造理念に基づく理念経営の実践知」
?実践知のリーダーシップ?
エーザイ? 理事 知創部部長 高山千弘
hhc(Human Health Care)の基本理念に基づき、内藤CEOのリーダーシップの下、
MR及びスタッフを難病に苦しむ患者医療の現場に派遣し、患者との対話を実践
させている。これにより患者たちが何を望み、どのような薬や治療を求めてい
るのかについて、MR達が自らの五感で感じ取った情報を会社にフィードバック
する仕組みを作り実践している。エーザイとしてはMRを医療現場に派遣するこ
とで多数の新薬開発に結び付け、少しでも患者を救うことで社会貢献に結びつ
けている。確かにエーザイはMR達を大勢派遣することで多額の人件費負担をす
ることになる。
しかしエーザイは強(したた)かである。一見して単純に経営理念に基づく大
規模な社会貢献とも見えるが、それだけではなくMR派遣により患者とのコミュ
ニケーションから得られる情報を将来の新薬開発に結び付け、MRに現場主義の
教育を施し、更に患者たちを自社の開発する新薬の潜在的ユーザーとして囲い
込みもなされるというエーザイの強かな長期戦略を読み取ることが出来る。エ
ーザイのリーダーの偉さはこうした長期的な視野の広さで社会貢献を長期投資
と位置づけし、持続的に実践していることである。
・パネルディスカッション
コーディネーター:
国立台湾大学教授 陳家聲(International Counsil for small Business President)
パネラー:
AsusTec Computer Inc. CKO 呉祟文
KMSJ 専務理事 久米克彦
KMSJ 専務理事 山崎秀夫
エーザイ 知創部 高山千弘
会場からは、エーザイの社会貢献に関連して「社会善」の概念や企業での
「場」のあり方についての質問が出された。
3.コメント・感想
本フォーラムに参加した限りでのコメントですが、台湾でのKM 研究は特別に
先端的な試みがなされていたわけではなさそうです。一方KM先進国を着実に学
び、一つ一つ丹念に積み上げてきています。このことがフォーラム最初のCPC
の陳詩龍氏の「台湾のKMは成熟段階を迎えている」という発言になったと思わ
れます。
また台湾企業、特に中堅メーカーに対してはCPCが経営コンサルを行うことで
KMを具体的に導入しています。台湾ではKMに「知識管理」を充てていますが、
台湾では「マネジメント」に管理的側面を強く意識しているためでしょうか。
そういえば「型」の中国語訳として「規範」が使われましたが、翻訳者で本フ
ォーラムの日本語同時通訳をして頂いた張麗卿さんと劉佳?さんとの間で型の
ままか規範とするかで激論が闘わされ、最終的に「規範」で行こうということ
になったそうです。型は習い守るべきものという守の意味合いを汲んでのよう
です。
筆者の講演後、Asus の呉さんからフォーラム資料の中の「規範」の文字を指
して、「あなたの言うとおりだ。企業にはこれが重要なんだ」と言われ直ぐに
は返答に困った覚えがあります。これからは台湾でも「型」は「型」と翻訳す
るようお願いしました。
ところで色々議論して分かった事ですが、台湾に於いては経済部工業局林科長
が台湾政府内における推進のキーマンであり、また台湾大学の陳家聲教授がKM
の理論面のキーマンです。今後も日本との間でKM活動の共有を続けて欲しいも
のです。そのためにTKFを台湾で開催する考えは意味があるのではないかと思
います。
台湾企業と日本企業の関係が深く、しかも製造業が多い中で台湾では日本企業
のKM実践に対して関心は高い様に思えました。
記 久米克彦(KMSJ)
<特別寄稿>
◆スマート革命―スマート機器による囲い込みの時代の始まりー その3
(日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事 山崎 秀夫)
スマート革命と言うのは総務省が2012年の「情報通信白書」で一人一台のパ
ソコン時代から一人複数台のスマート機器を活用する時代への移行、ユビキタ
スネットワークの実現形態としての新しいICTのトレンドをスマート革命と
呼んだため、普及し始めている用語です。米国ではポストパソコン時代とか、
ポストPCコンピューティング、新しい個人コンピューティングの形などと呼
ばれています。
さて今回はグーグルやマイクロソフトが直接、スマート機器販売に出、またソ
ーシャルメディアのフェースブックまでもスマートフォンに出ると予想されて
いる訳について述べてみましょう。
1、スマート機器では広告売り上げが伸びない予測
パソコンとインターネットの時代にはマスメディアから広告費がインターネ
ットにシフトし、それをグーグルが独り占めする形で大きな売り上げをあげま
した。そして広告売り上げを背景として色々な情報サービスを無料で提供する
「フリー」の時代が注目されていました。しかし広告単価と言う点からは、
NBC放送の元CEOであるジェフ・ザッカ―氏が「アナログのドル、デジタ
ルのペニー」と呼んだようにネットでは広告単価が一ケタ低いものでした。ス
マート革命が進行すればスマートフォンなど広告単価が更に低くなると言われ
ています。元モルガンスタンレーの有名アナリストのメアリー・ミーカー氏は
「パソコン時代の広告単価の約5分の一」と予測しています。
その理由はスマート機器は画面が小さい為、欧米の広告主は効果に対して懐疑
的と考えられている為です。
その為、スマート革命が進行し、各種スマート機器からのインターネットアク
セスが増加すれば、低い広告単価の前にインターネット企業はゆとりがなくな
り始めており、「フリー」の時代は次第に終焉するかもしれません。
2、株主からの批判
最近、グーグルの四半期決算では、スマート革命の進行の影響でグーグルの
主な売り上げである広告売り上げのクリック単価が漸減傾向にあり、その為株
主からの批判が増しています。株主にとってみればグーグルの売り上げは伸び
ているものの「古いグーグルであり、スマート革命に対応した稼ぎをしていな
い。」と言うことになります。
「スマート革命の時代に広告で稼げないならアップルのように機器やアマゾン
のようにサービスで稼げ!!」と言う声が四半期ごとに強くなりました。その
結果、グーグルは独自ブランドのタブレットを販売し、買収したモトローラモ
ビリティを使ってスマートフォンなどスマート機器を開発し、販売しようとし
ています。
同じことは本年5月に上場したばかりのフェースブックについてもあてはまり
ます。最近、フェースブックの株価が冴えないのは、「フェースブックにはス
マート革命に対応した広告を稼ぐ戦略が無い」と言う批判が高まっているから
です。その為、フェースブックも遠からず自社スマートフォンを販売すると言
う噂が絶えません。
広告売り上げで稼げないスマート革命の時代には、アップルやアマゾンのよ
うなスマート機器の群れの上にネットの茎を生やしてサービスの森を作り上げ
る垂直統合モデル(摺り合わせ型生産モデル)が注目されています。その結果、
パソコン+インターネットのオープンの時代は終焉し、スマート機器により顧
客をサービスに囲い込む閉鎖型のモデルが普及し始めています。デジタル商品
やその保管サービス、物理的な商品のネット通販を囲い込み用の自社スマート
機器販売と組み合わせて稼ぐモデルです。
3、パソコンの再発明
その結果、パソコンソフト企業のマイクロソフトもスマート革命時代に対応
したパソコンの再発明を迫られています。WINDOWS8と呼ばれる新しい
プラットフォームの発表と共にマイクロソフトは、顧客である取引先のメーカ
ーと摩擦を起こしてまで自社製の新たなパソコンを発表し、世間を驚かせまし
た。
これは生活者の領域で支持を集めない限り、マイクロソフトのドル箱である企
業によるパソコン利用の市場がアップルのiPadと呼ばれるタブレットに食われ
てしまうと言う危機感からです。
スマート革命がネットサービスのグーグル、ソーシャルメディアのフェースブ
ック、そしてパソコンソフトのマイクロソフトにまでビジネスモデルの再設計
を迫っています。
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<編集後記>
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学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
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