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日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
第69号 2013/5/24
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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局
□ 目 次
◆経営関連学会協議会主催 第6回シンポジウムのご案内
◆第23回知の創造研究部会研究会の報告
◆The Kowledge Forum 2013 Russia(ウラジオストク)参加レポート
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第13号の投稿募集について
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◆経営関連学会協議会主催 第6回シンポジウムのご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)
本学会は経営関連学会協議会に加盟しておりますが、同会主催のシンポジウ
ムが下記の通り開催されます。シンポジウム参加希望の方は、同会事務局へご
連絡ください。
テーマ:経営学研究の国際発信力の強化―
「英文経営学オンラインジャーナル」創設の計画―
会 場:明治大学 駿河台研究棟2階第9会議室
日 時:平成25年6月2日(日) 午後2時?5時
参加申込先:経営関連学会協議会 事務局 (参加費無料)
E-mail:info@jfmra.org Fax: 03-6745-9668
(経営関連学会協議会 評議員:植木、高梨)
◆第23回知の創造研究部会研究会の報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 知の創造研究部会長 植木英雄)
本年4月19日に開催された第23回知の創造研究部会では、専修大学経営学部
の小沢教授より、「プロダクトとプロセスからビジネスモデルへ?プロ2・イ
ノベーションのインパクト?」について報告をして頂きました。
当日は24名の参加申込みがありましたが、発表内容、質疑・討論の内容が素
晴らしいものでしたので、会員の皆さんに新しい気付きや知見を提供し、今後
お互いの研究発展に繋がることを期待して研究会の成果を報告します。
本誌では、先ず小沢教授から報告概要をまとめて頂き、次にコメンテータを
された金沢工業大学の加藤教授にコメントの要旨をまとめて頂きました。
また、安部会員より実務経験を踏まえた視点から感想をコメント風にまとめて
頂きました。以下にそれらの要旨を掲載しますので、ご覧ください。
【専修大学経営学部 小沢一郎教授の報告概要】
次の3つのブロック順に報告概要をまとめます。
(1)「プロセス」の概念拡張(プロセス・イノベーションにおいて)
プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションに関して,Abernathy
and Utterback (1978),Utterback (1994)のような考え方が認められている。
また,
プロセス・イノベーションにおける「プロセス」に関しても,Porter(1985)
のバリューチェーン,マッキンゼーのビジネスシステムなどの捉え方がある
が,先のAbernathyらにおける「プロセス」は生産工程を主に意識していた。
まず,このようなプロセス概念を整理して拡張することに取り組みたい。
<タイプA: MP>L社によるX製品の生産プロセス,
<タイプB:BP>L社によるX製品のビジネスプロセス,
<タイプC:SCP>複数企業によるX製品のサプライチェーン・プロセス,
<タイプD:LCP>X製品のライフサイクル・プロセス,
<タイプE:STP>X製品を含むシステムのトータル・プロセス,
という5つのタイプを提案すると共に,これをベースとして次の議論へ進みた
い。
(2)プロ2・イノベーション:試論段階(プロダクト・イノベーション&プ
ロセス・イノベーション)
まず,「プロ2・イノベーション」とは,「プロダクト・イノベーションと
プロセス・イノベーションを同時に(あるいは,或る期間をかけて編み上げる
様に),達成していく類のイノベーション」と定義しておく。
次に,前述したプロセスの各タイプに対して2つずつ,「プロ2・イノベー
ション」の事例を紹介しつつ検討を加えた。
(3)収益ポイント増加のイノベーション(ビジネスモデルへの展開)
これまで,業界の収益性に関する検討については「プロフィットプール」が
挙げられ,Gadiesh, O. and Gilbert, J.L. (1998),とその後の研究がある。
また国内におけるビジネスモデルに関する議論は,加護野忠男・井上達彦
(2004),妹尾堅一郎(2009・2011)等多くがあるが,野中郁次郎(2012)が,
「ビジネスモデル・イノベーション(BMI)とは,暗黙知をベースにして創造
される高質な知を単にモノづくりに終わらせることなく,新たなやり方で価値
に変える経営モデルに衣替えすること」と主張していることに着目したい。
すなわち,ここにおける「新たなやり方で価値に変える」方法の一つが,まさ
にプロ2・イノベーションであると考えるからである。
そこで,ゼロックスのサービス事業の取り組み等を事例として検討を加えた。
このように考えると,プロ2・イノベーションに2つの類型がある。
?クオンタム・リープ型:短期的ナレッジ創造,
?ブレイド・アップ型:中長期的ナレッジ創造の積み上げ(編み上げ),
という2タイプである。
以上。
【金沢工業大学 加藤鴻介教授のコメント】
イノベーションと言えば、概してプロダクト、あるいはプロセスのいずれか
のみに焦点を当てて企画実行されることが多いと考えられるが、本発表は、多
くの事例を通して、プロダクトと共にプロセスを併行してイノベートすること
が、新たなビジネス発掘や拡大につながるイノベーションになりうる、として
いる。特に、プロセスをその範囲の拡大順にManufacturing, Business, Supply
Chain, Lyfe Cycle, System Totalと5段階に種別し、それぞれを事例によって
説明されているように、イノベーションの対象範囲も大きければそれだけ効果
やインパクトの大きさにも繋がる。
ナレッジ・マネジメントの視点からは、より広い範囲のイノベーションの実
現要件として、知の創造と蓄積・発展に繋がるような企業や組織を超えたオー
プン・イノベーション、すなわちナレッジ・コラボレーションによる異なる知
識要素の新たな結合環境であると言えよう。
本発表における、プロ2 イノベーションは、先のプロダクトとプロセス両
者が共にそれ自体が大きな急進的イノベーションを伴うものであるとする。
イノベーションに必要な発想は100%新しいものに限らず、広範囲、多面的に
探索すれば発見あるいはヒントとして見つかる可能性がある。引用された事例
からも理解できることではあるが、多くのイノベーションは、他業界や他産業
のプロセス方法の内、最良のもの(いわゆるベストプラクティス)を可能な形
態で取り入れたものとも言えよう。
また、インパクトあるイノベーションの多くは、顧客や取引先を含めた複数
のステークホルダーに対して、品質向上・コスト低減・作業や配送時間短縮な
どのベネフィットをやはり同時に複数提供できるようになったものがある。創
造の発想方法としては、対象プロダクトやプロセスをより幅の広い一連のプロ
セスを対象に思考を深める事が有効と示唆している。
モノづくりの強さが我が国のコンピテンスと言われることは多いが、真の競
争力あるイノベーションはプロセスや最終的なビジネスとしてのイノベーショ
ンとして実現していると考えられる。これはベネフィットの享受は企業主体に
見るだけではなく、むしろ人間個人の集合である現代社会が益々、「モノ」指
向から「コト」指向、すなわち社会・企業・個人が最終的に価値を得る行動
(コト)における製品やサービスの貢献に対して評価がなされる傾向が益々強
くなってきている、とも言えよう。
成功するビジネスイノベーションは、多面的なベネフィット実現のブレーク
スルーであり、小沢先生のプロ2イノベーションの研究が、是非そのイノベー
ション成功の着眼点を客観的なモデル化としてまとめていただくなど発展され
ることを期待したい。
【電気通信大学 産学連携センター 安部博文会員の感想?プロ2イノベーシ
ョンの実務的インパクトについて?】
小沢先生が提唱するプロ2イノベーションとは,プロダクト・イノベーショ
ンとプロセス・イノベーションがハイブリットした場合の話です。私がプロ2
イノベーションの真骨頂はこれだ!とインスピレーションを受けたのは,「プ
ロセス徹底して磨くことで,結果的に新しいプロダクトが生まれる」という指
摘でした。
小沢先生が紹介した事例に魚の養殖と住宅建築がありました。いずれの例も,
プロダクトは魚であり住宅です。従来のものと特に変わりのないプロダクトで
す。しかし,事例の魚の養殖の場合,養殖のプロセス管理に徹底に拘ることに
よってそれまでなかった高いランクの食味の魚ができあがる。住宅の場合です
と,従来は現地で組み立てていたものが,事例の住宅は工場で精密に組み立て
るため,強度と精度に優れた住宅ができる。しかも建築途中に雨で住宅の材料
が濡れることもない。さらに,工期は在来工法の半分で済む。施主の負担が少
ないという内容です。
1999年から中小企業施策として経営革新制度が始まっています。この経営革
新制度では,イノベーションをプロダクトとプロセスに分けています。それぞ
れ商品とサービスがあるので,4つの分類のイノベーションがある,というこ
とになります。しかし,実際のところは,小沢先生が提唱しているプロ2イノ
ベーション的な内容のものも相当数あります。
大事なのは,プロダクト・イノベーションか,プロセス・イノベーションか,
という分類ではなく,お客が満足・納得するモノやサービスを提供するために,
プロセスの管理が徹底されているか,という点です。小沢先生のプロ2イノベ
ーション視点で私が知っている経営革新事例を見直すと,プロセス管理にまだ
まだ改善の余地がある,つまり勝機を開拓する余地はまだまだある,というこ
とです。
学問的には,プロ2イノベーションについての定義の明確化が重要になると
思います。ただ,企業支援の実務に関して言えば,お客が評価する良いプロダ
クトを創出するのは,プロダクトの新規性もさることながら,製造プロセスや
提供プロセスの再構築や磨きこみの徹底こそが重要ではないか,ということで
す。プロセスに徹底的にこだわることで,従来とは次元の違うプロダクトを創
出することができる。
小沢先生のプロ2イノベーションのお話から、プロセス・イノベーションに
よってプロダクト・イノベーションへの道が開けるという気付きを与えて戴き
ました。経営革新制度については下記URLをご参照ください。
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/keiei/kakushin/1gaiyo.htm
研究会の写真集は、下記URLをご参照ください。
http://www.kmsj.org/archive/20130419photo.pdf
◆The Kowledge Forum 2013 Russia(ウラジオストク)参加レポート
(TKF実行委員長 高梨智弘)
TKFロシアは、当初2012年9月末に設定されたが、APECの直後であり延期され、
2013年4月29日・30日にロシア沿海州ウラジオストクで開催された。
諸般の事情から、第2回日ロ極東フォーラムの一部会として、ナレッジマネジ
メント部会が設定され、29日の午後から30日終日にわたって開催された。
29日の午前中は、極東連邦大学ルースキー島キャンパス会議場(2012年APEC会
場)で、オープニング全体会議が行われた。巨大な円形にセットされた会場は
トップクラスの設備であり、日ロの関係者(鳩山邦夫 日ロ協会会長・衆議院
議員、伊藤伸彰 在ウラジオストク日本国総領事等)による歓迎スピーチが行
われた。
以下、午後から都心・極東連邦大学図書館大ホールで行われた分科会の発表テ
ーマと概要である。
・総合議長:
プロツェンコ・イーゴリ・ゲンナーディエヴィチ
(極東連邦大学副学長(学術イノベーション担当))
第1セッション:
・13:00-14:00
高山 千弘
(日本ナレッジ・マネジメント学会会員、エーザイ知創部長)
基調講演「ヒューマン・ヘルスケアという共通善を目指す製薬企業における
知識創造活動」
・14:00-14:30
マースロフ・アレクセイ・アレクサンドロヴィチ
(国立高等経済学院 東洋学科長、中国戦略研究センター長)
「文化的ステレオタイプの境界線を越える教育。新たな世代と新たな傾向」
第2セッション:
・14:40-15:20
小野瀬 由一
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事、拓殖大学講師、医業経営コンサルタ
ント)
「日本のヘルスケアシステムと情報 医療・介護における知の経営?」
・15:20-15:50
プロツェンコ・イーゴリ・ゲンナーディエヴィチ
(極東連邦大学副学長(学術イノベーション担当))
「企業利益に即した専門人材の契約的育成」
第3セッション:
・16:05-16:45
高梨 智弘
(日本ナレッジ・マネジメント学会副理事長、新潟大学大学院技術経営研究科
特任教授)
「知の経営の基本的概念の意味とは?」
・16:45-17:15
グロムイコ・ユーリー・ヴャチェスラヴォヴィチ
(予測研究所ディレクター、ロシア国家賞(教育分野)受賞者)
「ネットワーク中心システムにおけるナレッジマネジメント:問題の設定から
知へ」
第4セッション:
・17:30-18:10
大和田 昭邦
((株)DynaxT 代表取締役社長)
「価値はデジタルではなく、アナログ力の方にある」7つの習慣と「ことのは」
・19:00-21:00
公式レセプション(ホテル・ヴェルサイユにて)
4月30日(火)
TKF RUSSIA 2013 第2日目(極東連邦大学図書館大ホール)
第5セッション
・09:00-09:40
久米 克彦
(日本ナレッジ・マネジメント学会副理事長、前スズキ監査役)
「スズキのアジア戦略と技術移転」)
・09:40-10:20
グーセヴァ・ナターリヤ・イーゴレヴナ
(国立高等経済研究所。総合的・戦略的マネジメント学科教授、経営学部国際
プログラム指導官)
「共同プログラム実現におけるナレッジマネジメント。露独プログラム
Doing Business in Russiaの経験」
第6セッション
・10:30-11:10
植木 英雄
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事、東京経済大学経営学部教授)
「自動車開発知の国際移転-中国日系JVCの現地化とリバースイノベーションの
挑戦-」
・11:10-11:40
フェシュン・アンドレイ・グリゴーリエヴィチ
(国立高等経済学院東洋学科日本セクション指導官)
「日本の地域主義と地域同一性のコントロールをめぐる問題。ロシアからの視点」
第7セッション:
・11:50-12:30
山村 延郎
(拓殖大学准教授)
「日本の金融産業と情報通信技術」
第8セッション
・13:45-14:25
安達 一彦
(株式会社インテリジェントウェイブ会長)
「M2Mの最新の動向」
・14:25-15:05
永里 伸一
(株式会社ランドスコープ社長)
「企業内知的リソースを活用した人材育成」
・15:05-15:45
小野瀬 由一
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事・ITC・中小企業診断士)
「芸道(Geido)と武道(Budo)から学ぶ日本の強み(知)」
・16:00-17:00
全分科会による総括(極東連邦大学図書館大ホール)
最後に、グロムイコ・ユーリー・ヴッチェスラヴォヴィチ(予測研究所ディ
レクター、ロシア国家賞(教育分野)受賞者)からは、ナレッジマネジメント
分科会の責任者として、テーマ毎に全スピーカーの名前を挙げ、スピーチ概要
を公表していただいた。
特に、人の視点や知の経営を理解して頂いたことは、各発表者の事例等の内
容に知識(Knowledge)・知恵(Wisdom)に加え、知心(Mind)の重要性につ
いて述べられており、日本の知の経営について整合性があったことが、今回の
高い評価につながったと思う。
以上、初めてのロシアでのTKFは成功裏に終わることができた。今後、実務
的な交流に加え、学術的な交流も期待されている。また、同時期にモスクワで
安倍首相とプーチン大統領の会談が開催され、時宜を得た企画であり、関係者
から大変に評価された。
TKF実行委員会の委員各位また発表者の皆様に感謝の意を表します。
(文責:高梨)
TKF Russiaのレポート&写真集は以下のURLでご覧下さい
http://www.kmsj.org/archive/tkf_russia.pdf
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第13号の投稿募集について
(『ナレッジ・マネジメント研究年報』 編集委員長 植木英雄)
『ナレッジ・マネジメント研究年報』第13号の投稿(論文および研究ノート)
を募集いたします。投稿規程と執筆要項(学会ホームページリンク先に掲載)
に基づき、2013年10月31日(木)までに投稿原稿とメディアを学会事務局研究
年報編集委員会宛てに送付してください。
なお、投稿を希望される方は9月30日(月)までに投稿の意思と題名を編集委
員長まで事前にメールでお知らせ願います。
(編集計画の参考にさせていただきます。)
投稿原稿は最近年の年次大会、研究部会等の発表者以外でも投稿できます。
会員の皆さんの奮っての投稿をお待ちしております。
「ナレッジ・マネジメント研究年報」投稿規定
http://www.kmsj.org/news/nenpou_kitei.pdf
「ナレッジ・マネジメント研究年報」執筆要項
http://www.kmsj.org/news/nenpou_youkou.pdf
連絡先:研究年報編集委員長 植木英雄 E-Mail: h-21ueki@tku.ac.jp
送付先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局 研究年報編集委員会 宛
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル4階
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<編集後記>
メルマガの内容についてのご意見、ご感想及びメールアドレスの変更などは
以下のアドレスにお願いします (編集長 松本 優)
学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp