No.48 2011年8月15日発行

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第48号  2011/8/15
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 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次
◆第3回ナレッジ・マネジメント講演会の報告
◆第3回ナレッジマネジメント講演会の概要報告
◆第3回ナレッジマネジメント講演会参加記(詳細レポート)
◆第3回ナレッジマネジメント講演会の様子(写真付レポート)
◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号の投稿募集について


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◆第3回ナレッジ・マネジメント講演会の報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

7月13日、第3回ナレッジマネジメント講演会(別名ナレッジで日本を元気に
する講演会))を7月13日(水)18:30-20:30 目黒駅近くの「CAFE y LIBROS」
で開催しました。
 
講師は澤谷みち子氏(元ANAで現オフィスさわや代表、当学会理事、多様性
研究部会部会長)
テーマは「顧客ナレッジからの企業変革 ?お客様と共に企業の成長を目指す?
参加者は会員11名、非会員10名の全員で21名が参加しました。

以下に一連の報告を掲載いたします。

 

◆第3回ナレッジマネジメント講演会の概要報告
(日本ナレッジマネジメント学会理事・当該講演講師 澤谷みち子)
 
2002年11月5日 全国版の新聞各紙にこんな広告が打たれました。

いい空は青い

到着のアナウンス。シートベルトをはずす。
地上にたつ。ほっとする。どんなに快適な
空の旅でも、ひとはストレスを感じている。
それをきちんと考える航空会社が、たぶん
いちばん気持ちのいい航空会社、になれる。
いい空は青い。
恋人に、待たされない。1杯目のビールを、
待たされない。自分が大切にされているか
どうかを、ひとはそんなことから感じ取る。
定時通りに出発、のアナウンスは、恋人の
誠実さを確かめたように、ちょっと嬉しい。
20世紀に。旅客機は豪華客船を見習った。
高級レストランを再現した。しかし、時代
が変われば、快適の意味も変わる。常識は
窮屈になってくる。それを変える挑戦者は。
21世紀の、新しい空をつくる航空会社は?


 9.11 ニューヨークのテロ後の厳しい航空不況の中、お客様の満足を追求す
ることで企業の戦いを進めていくというANAの決意表明のような企業広告です。
いったいこの広告は誰に宣言しているのでしょうか?もちろん、新聞広告とい
う大きな金額を使う媒体である以上、世の人々に広くアピールするものである
ことは当然です。しかし、一方で、多くのこの広告を見たANAグループ社員も
奮い立つ思いにとらわれる、強いメッセージのある広告でした。

 2002年4月、それまで千歳空港で現場のお客様対応を中心に責任者の業務を
行っていた私に、本社CS推進室CS企画部への辞令が渡されました。ANAが新創
業宣言で宣言していた「お客様に徹底的にこだわる」部署への異動です。
 
 これまで、顧客満足については営業部門の中で、日々の改善活動の一環とし
てこれまでも勧められてきていました。しかし、今回の取り組みは今後の航空
業界の展開を考える中で、いかにして持続的な企業の成長基盤を作っていくの
かという課題への挑戦でした。社長直轄の本社部門としてパイロット、整備、
客室乗務員、空港スタッフ、営業等、ANAグループの運航を支えるメンバー7
名からのスタートでした。私自身は30年間の空港現場の経験をいかせるまた
とないチャンスでした。そして、スタートしてから半年、11月に発表したのが
このブランドを表現する企業広告でした。

 具体的にどのようなことを話したかについては、詳しく記載されていますの
でそちらをご覧ください。担当者としての自分がこだわった点について少しお
話しします。

1.CS推進活動を現場の改善活動で終わらせない
 地方の現場の責任者として、様々なお客様の声は必ずしもスタッフの対応だ
けでは解決しないものであることは身に染みて分かっていました。とかく、CS
推進活動というと「あいさつ」や「お辞儀の仕方」の様な表面的なノウハウを
語ることが多くあります。しかし、実際に現場で若いスタッフを育てていると、
実はそのようなノウハウは一過性のものでしか無く、本質的な組織力向上には
ならないと強く感じていました。そのために、プロとしての自分自身に誇りを
持てるCS推進活動としていきたいというのが私自身の強い思いとしてありまし
た。このことは、結果として接客スタッフ以外に広くCSを展開する原動力にな
ったと思っています。商品を企画する現場、営業販売する部門、システムを作
る部門、整備する部門、運航を担う部門、様々な部門のスタッフが「お客様の
ために」という共通の目標に向かってエネルギーを燃やす、そのための火付け
役としてCS推進部門が機能する必要があります。
 情緒ではなく論理で展開し、きちんと経営戦略としてCS推進のPDCAをまわし
ていくこと、このことの地道な取り組みが、結果として大きな差になってくる
のだと考えています。

2.背骨としてのブランドを大切にする
 ANAではブランドを担うのは社員一人ひとりと考えています。従って、具体
的にお客様と接する部分でブランドが認知されることにつながる為、ANAのブ
ランド統括部門はCS推進室となっています。一人ひとりのスタッフとお客様と
のエピソード、その中にこそANAのブランドが生きているのです。そして、そ
の背骨となる「ANAらしさ」については固定されたものではなく、お客様の声
や経営環境を踏まえながら、経営陣が判断を行っていくというプロセスが、ブ
ランドの持続的な成長の為に不可欠です。経営のトップが自らの判断でブラン
ドを率いていくのだという組織上の位置づけが大きな原動力となりました。

3.自分の喜びにつながる活動にする
「○○すべき」、「○○であらねばならない」という重々しい言葉は、何度も
聞いているうちに心の中を素通りしていくことが多くなってくると思っていま
す。お客様との喜びにつながる活動は、提供するスタッフの喜びにもつながる
ものでありたいというのが私の思いです。たとえ、その場面では厳しい状況で
あったとしても、その仕事を通して達成する活動に歓びを見いだす社員を育て
ること、このことが結果としてのCS向上につながると信じています。生き生き
と仕事をする社員がいるからこそ、お客様の歓びも次々と生まれてくる。その
為の活動となるようにCS推進部門が工夫すべきことはたくさんあります。

 38年間のサラリーマンを終えて、振り返ると人と人をつなぐ素晴らしい仕事
に携われたと思っています。しかし、若かった頃の自分は「この仕事を続けて
いて本当に未来はあるのだろうか」「接客業というのは報われないなー」等と
考えることも多くありました。現在も、多くのサービス業では現場のスタッフ
のがんばりで成り立っている所が多いと思っています。そうした人々が本当に
プロとしてやりがいを持ってお客様の満足に取り組んでいるのだろうか。そん
な疑問を持つことも多くあります。
 しかし、機械では実現できない、人間ならではの能力が求められるのがサー
ビス業です。そこにこそ差別化の軸があり、戦略的に取り組むべき課題である
ということを、ANAでの実践やこれまでの経験を踏まえて、多くの人に知って
いただきたいと思っています。

2011年8月12日 
オフィスさわや代表 澤谷 みち子


 
●アンケート結果の報告を以下のURLに掲載いたしました(事務局)
http://www.kmsj.org/archive/20110713questionnaire.pdf
 
●当日使用のレジメは会員専用頁に掲載いたしました(事務局)
http://www.kmsj.org/member/data/20110713pp.pdf


 
◆第3回ナレッジマネジメント講演会参加記(詳細レポート)
 日本ナレッジ・マネジメント学会会員 安部 博文(電気通信大学)

第3回ナレッジマネジメント講演会が,7月13日(水)18:30?20:30の2時間,
品川区内の会場で行われた。講師はオフィスさわや代表で日本ナレッジ・マネ
ジメント学会理事である澤谷みち子さん。JR目黒駅から歩いて5分ほどの会場
には非会員を含め20名弱の聴衆が参加。この日のテーマである「顧客ナレッジ
からの企業変革‐お客様と共に企業の成長を目指す」と題する澤谷さんの講演
に全員が熱心に耳を傾けた。以下、講演の内容を報告しよう。
 
講演は6章構成である。

「はじめに」では,講師・澤谷みち子さんのプロフィールの紹介があった。
ANA勤務38年間のキャリアを持ち,うち30年は千歳空港で旅客サービスの現場
とマネジメントを担当。残り8年は本社でCS部門のリーダーとして活躍。
ANAが全社活動として行う「Inspiration of Japan」のブランド・マネージャー
を最後の仕事に2010年3月にANAを退職。
退職後はオフィスさわやを立ち上げ,「心と組織に風を」をモットーに企業戦
略としてのCS活動の啓発・普及活動や当学会の多様性部会の主宰者として活躍
している。
なお,テーマの中の「顧客ナレッジ」とは「お客様からの声」のことであると
説明があった。
 
第2章は「企業変革の起点」と題して航空業界を取り巻く外部環境の激変ぶり
をデータを示しながら説明。
9.11やイラン戦争の勃発で旅客数が世界的に落ち込んだこと,羽田空港の利用
形態が国際線の利用の多様化やこれに伴う航空会社の集約化や新参入,価格競
争などの状況を解説した。
 
第3章は「顧客にこだわる」と題してANAが自社の事業は顧客サービス業である
(運輸業からの脱皮)と新創業宣言をした背景を説明。
経営者が「お客様からの声に徹底的にこだわります」という考え方を社内に明
確に打ち出すとともにCS活動を推進するために社長直轄でCS推進室を設置する
など,具体的な行動内容を報告した。

第4章は「信頼と共感=ブランド」という題目のもと,ANAのキャッチフレーズ
「安心・あったか・明るく元気」が生まれた経緯とその後の組織内浸透の活動
の話があった。
ANAブランドの元に統合した複数の部門あるいは企業体のメンバーが一つのキ
ャッチフレーズを介して一体感を持てるようにするため,抽象的な言葉だけで
なく,具体的なエピソード(物語)を通して組織メンバーに浸透させる工夫
(社内専用冊子作りや社員同士で送るメッセージカード等)をしたことが明か
された。
 
第5章では「強いブランド6つのステップ」と称してANAの実践活動から一般論
へと敷衍(ふえん=押し広げる)して理論的に展開するお話がなされた。

6つのステップは次のとおりである。
?(自社の)強味を知る。
?目標を定める(ANAの事例では,2009年までにCS・安全性・価値創造の3点で
アジアNo.1の企業になる,というもの)。
?育てる仕組み(ANAの事例では,新人研修・新任管理職研修にCS活動・ブラ
ンド戦略を教育。CSリーダー育成活動など)。
?実践・現場力(トップ自らが現場を回り意見を交わすキャラバン活動で率先
垂範)。
?顧客の声(澤谷さんは,顧客から寄せられる生の声は多いほど良いという考
え方。従来は紙のアンケートだったものが,インターネット・ツイッターなど
コミュニケーション手段の多様化に伴って激増することが予想され
る)。
?品質管理(澤谷さんはCS活動とは企業活動で目標を達成するための戦略活動
であり,掛け声だけのお気持ち活動ではないと明言。
 
ANAで実際にあった事例として,従来のサービスを止める決断やサービス品質
を向上させるために大投資する決断を現場から上がった声をもとに経営陣が下
した事例を紹介。
経営陣が「現場で何とかしなさい」という先送りをしなかった好事例であった)。

最後は「顧客満足は誰のため」と参加者に質問を投げかけ,お客様に満足して
もらう活動は回りまわって企業のブランドを向上させ,良い組織のメンバーと
して働いている自分,という誇りにつながる,三方皆が得をする考え方を紹介
し講演を締めくくった。
 
講演終了後の質疑応答では次々に質問の手が上がり,5名まででいったん終了,
その後は懇親会の場に会場を移すことになった。
 
以上。(安部博文)

 

◆第3回ナレッジマネジメント講演会の様子(写真付レポート)
(メルマガ担当理事 松本 優)

以下のURLに第3回KM講演会の様子(写真付レポート)を掲載しました。
今回は単なるプログラムに沿った写真の羅列の写真集ではなく、筆者独自のサ
ービス精神で講演のポイントの部分の解説(これが成功のポイントだ)や大事な
スライドの箇条書きの行間をカバーしてわかりやすく解説したり、エピソード
や冗談、ハプニング等も拾った臨場感溢れる(見終わってなんとなくその場に
自分もいたような気分になれるように工夫したレポートです。
ちょっと楽しくちょっとためになる変なレポートです。
ぜひ以下のURLでご一読下さい。
http://www.kmsj.org/archive/20110713report.pdf

 

◆『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号の投稿募集について
(『ナレッジ・マネジメント研究年報』 編集委員長 植木英雄)

『ナレッジ・マネジメント研究年報』第11号の投稿(論文および研究ノート)
を募集いたします。投稿規程と執筆要項(学会ホームページリンク先に掲載)
に基づき、2011年10月31日までに投稿原稿とメディアを学会事務局 研究年報
編集委員会宛てに送付してください。

なお、投稿原稿は最近年の年次大会、研究部会等の発表者以外も投稿できます。
会員の皆さんの奮っての投稿をお待ちしております。

「ナレッジ・マネジメント研究年報」投稿規定
http://www.kmsj.org/news/nenpou_kitei.pdf
「ナレッジ・マネジメント研究年報」執筆要項
http://www.kmsj.org/news/nenpou_youkou.pdf

送付先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局 
     研究年報編集委員会 宛
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル4階


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<編集後記>
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アドレスにお願いします。        (編集長 松本 優)

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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田隆夫)
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